日本の中学生は「読むこと」も苦手!? 全国学力調査(中3英語)

「読むこと」の正答率も低かった

第1回の記事で取り上げた発信型の英語力に問題がある点以外に、今回の全国学力調査(中3英語)の結果でもうひとつ気になることがあります。それは、「読むこと」の正答率が「聞くこと」よりも低かった点です。もちろん、両試験では問題の難易度に違いがあるという事情もあるでしょう。それでも、これまで日本人の英語力については、読むことについて一定の水準にあるという自負がありました。しかし、今回の結果を見ると、英語に関する数少ない(?)長所すら危ないという感じを受けてしまうのです。

今回の結果の背景には、英語の4技能をともに重視するため、従来ほど読むことに時間を割けられなくなっていることもあるのではないでしょうか。「実用性」を重視するため会話や日常的な話題が増え、文法やまとまった内容の文章の扱いが薄くなっているという指摘もあります。

第1回の記事でも触れたように、「読むこと」を試す問題全体の正答率が56.2%の中でも、次のような設問では特に正答率が低くなっています。

この結果について、国立教育政策研究所は、次のような分析をしています。

「日常的な話題について、情報を正確に読み取ることはできている」一方で、社会的な話題については「まとまりのある文章を読み、書き手が最も伝えたいことなど大切な部分をとらえること」や「読んだ後に自分の考えを示すことができるよう、話の内容や書き手の意見などを主体的にとらえること」に課題がある。また、「書くことについては、基本的な語や文法事項等の知識の定着やそれらを活用することに課題がある。」

出典元:文部科学省 国立教育政策研究所「平成31年度 全国学力・学習状況調査 報告書」

これらのコメントには、第1回でも触れた、2011年度から小学校に導入された「外国語活動」を受けてきた今の中3生の英語力があまり伸びていないのでは?という危惧が、現実のものとなったような響きがあります。

また、以下の分類の正答率を見ると「表現する」英語力に課題があることがわかります。

問題をどのような観点から評価しているかで分類した結果
「外国語表現の能力」を問う問題の正答率→1.9%

解答形式別に分類した結果
「記述式」の正答率→7.3%

全6回シリーズでお送りする「全国学力調査(中3英語)の結果が暗示すること」、第2回は自信を持っていたはずの「読むこと」についても、決して安心できない現状を指摘しました。第3回は、最も課題となっている「話すこと」の指導に関して考えてみます。詳しくは▼をクリック!

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