英語で「話すこと」の正答率は5割以下! 全国学力調査(中3英語)

2019年、全国学力調査では新たに中3生を対象とした「英語」調査が実施されました。英語4技能の中でも最も正答率が低かった「話すこと」に関する問題は、今回、大問3題、設問数では5問が出題されました。設問ごとの正答率は低い方から、10.5%、25.7%、27.3%、44.7%、45.8%と、すべて半数以下の正答でした。中学生の英語で「話す力」について、問題点と解決策を見ていきましょう。

「話すこと」で多く見られた誤りの傾向3つ 

①聞かれたことに対して文章ではなく、語句で解答をした

【例】“They are watching TV.”と答えるべきところを“Watching TV”と答えてしまった。(問題によっては、この種の解答も正答扱いとなっています)

②動詞の欠落や主語の誤選択など、文法的な誤りがある解答をした

【例】“They    watching TV.”

これらの誤答の多さは、普段の授業において語句レベルの応答は行われているものの、きちんと文章で受け答えする訓練が不足しているのではないかと想像させる結果です。語句の応答ならば、あまり文法を意識しなくても済むという事情も影響しているのかもしれません。

③課題に対して関係のない解答をした

「話すこと」の中でも、特に正答率が低かったのが大問2です。この問題は、1枚の写真を見ながら会話している2人の人物のやり取りを聞き、その会話が続いていくように写真に写っている人物に関して即興で質問をする、という問題でした。(正答率10.5%)

写真を見て即興でセリフを考える力が求められる(上記写真はイメージです)

この問題の誤答で最も多かったのは、会話の内容とは直接関係のない質問をしたもので、全解答の33.5%もありました。また、何か質問しようとするのですが、1、2語話したところで質問が中断してしまった解答も27.8%ありました。この問題については無回答も多く、20.7%もありました。

国立教育政策研究所のコメント

今回の「話すこと」の結果について、分析を行った国立教育政策研究所は以下のようにコメントしています。

話すことについては全体的に課題が多く、特に即興でやり取りすることに課題がある。(「書くこと」の結果とも併せて)基本的な語や文法事項等の知識を活用することに課題があり、(中略)相手に伝わる英語で表現することができていないと考えられる。

出典元:文部科学省 国立教育政策研究所

そして、この分析をもとに今後の英語指導の改善策として、以下を提案しています。

・一文一文を聞き取る/ 読み取るだけでなく、目的、場面、状況等に応じて聞く/ 読む言語活動を充実させる

・文法事項等を言語活動の中で理解し定着させる

・即興のやり取りをはじめとして、話すこと/ 書くことの発信の言語活動を充実させる

出典元:文部科学省 国立教育政策研究所

話す力を付けることの難しさ

国立教育政策研究所からは今後の改善策が出されましたが、「話すこと」の指導は非常に難しいものです。長年英語指導を研究・実践してきた専門家でも「話すこと」の難しさや指導時間の必要性を以下のように指摘しています。

「スピーキング能力というのは非常に複雑な構成概念から成り立っており、このようにすれば全ての生徒が一律に短期間でスピーキング能力を上げられるというような英語授業があるわけではない。(中略)英語表現は脱文脈的に(具体的な場面や状況を設定しないで:筆者注)覚えたとしても、それがどのような場面で使用されるかが分からなければ実際に使えないため、使用される場面とともに使用体験を積み重ねる必要がある」

出典元:藤森千尋「高大接続としての英語入試改革の問題点と具体的な検証の必要性〜何のための改革か〜」(『自律した学習者を育てる言語教育の探求(10)』2019.7中央教育研究所)

課題は「英語で話す」ことだけにとどまらないという見方もできます。普段、カジュアルな場面で使われている日本語での「語句のキャッチボール」的なコミュニケーションの次元から根本的に改めて、文章で発信する力を鍛えていく必要があるのかもしれません。

「行く?」「いいね」など短い語句のキャッチボール

まとめ

全6回シリーズでお送りする「全国学力調査(中3英語)の結果が暗示すること」。第1回から3回にわたって、今回の「全国学力調査(中3英語)」の結果から特に課題と思われる面を取り上げてきました。次回からは、このような英語力を改善するために行われているはずの英語教育改革が思うように進んでいない背景について、別の側面から考えてみます。続きは以下をクリック▼

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