学校教育で重視される英語力

連載:教育者のための英語4技能教室

第1回: 学校教育で重視される英語力

2020年度から適用される予定の新しい「学習指導要領」の編成作業が大詰めを迎えています。その詳細は2016~17年度中に発表される予定で、発表される内容に応じて新しい教科書を編集したり、学校ごとの教育課程を改変する作業が始まります。日本の大部分の学校にとって、この「学習指導要領」は自校の教育をこれからどうしていくかを考える際の、いわば「1丁目1番地」みたいなものです。

これからの日本の学校教育の進路を左右することになる新しい「学習指導要領」では、英語教育に関して、「高等学校卒業段階における英語力の成果指標を基に、国際的な基準であるCEFRのA2~B1レベル程度以上(英検準2級から2級程度以上)の高校生の割合を5割とする」国の目標を達成するために、「小・中・高等学校を通じて一貫して育む領域別の目標を設定し、初等中等教育全体を見通して確実に育成する」と、その重要性が明記されています(*1)。

*1 次期学習指導要領に向けた「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(中教審答申)2016年12月21日

現在小学校での英語教育としては、5・6年生を対象に「外国語(実際には英語のことですが)活動」が行われています。「外国語活動」というのは、国語や算数などの「教科」ではなく、学級活動や部活動のような個人の成績評価をともなわない「教科外活動」のひとつです。ところが、今度の新しい学習指導要領ではこの「外国語活動」を3・4年生に降ろし、5・6年生については正式な「教科」とすることが決まっています。

つまり、小学校でも英語の成績をつけるようになるということです。(学校によっては、2018年度からの先行実施も可能となっています。) また、現在は教科としては中学校から始まっている英語が小学校5年生から始まるということは、新しい学習指導要領のもとでは中学校、高校の英語の内容も変わってくる(簡単に言えば、今よりも複雑な内容になる)ことになります。さらに、英語が小学校の教科になると、現在はごく一部にとどまっている中学入試で英語を課す私立学校、今後一気に増加するかもしれません。

英語教育が変わるのは、小学校や中学校だけではありません。学習指導要領の改訂と連動して、小学校から高校までの教育に大きな影響を及ぼしている大学入試も抜本的に変える必要があるとして、現在とは違う入学試験や選抜制度の導入を検討しています。

例えば、現在多くの受験生が受けている「大学入試センター試験」に代わって、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」という新しいテストを始めようとしています。このテストの特徴は、これまでの知識を中心に試す選択肢型オンリーのテストではなく、思考力や表現力も測定できるテストとして記述式の問題も加えようとしていることです。

また、英語については「4技能重視」の観点から、スピーキングやライティングの出題も検討しています。このように大学入試の英語が変われば、それに備える高校の英語教育も変わらざるをえないでしょう。さらに英語について言うならば、実用的な英語力は就職試験や入社後の昇進試験でも必要になってきています。

このように、学校教育で英語が重視されることによって、進路選択や進路決定のあらゆる場面で英語力が大きなポイントになってきます。

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