» 文部科学省英語教育改革PM葛城崇が語る、高大接続最終報告に託した5つの願い

英語4技能資格・検定試験対策サイト

教育者インタビュー

文部科学省英語教育改革PM葛城崇が語る、高大接続最終報告に託した5つの願い

2016.03.31

2016年3月29日−

教育再生実行会議、中央教育審議会から足掛け3年議論されてきた大学入試改革の方向性が示される「高大接続システム改革会議 最終報告」の発表を直前に控え、英語4技能化のキーパーソンである文部科学省英語教育改革プロジェクトマネージャー葛城崇氏が4skillsのインタビューを引き受けてくれた。

葛城氏と私は、葛城氏が楽天株式会社の社内公用語英語化(英語化プロジェクト)の責任者であった2013年に知り合っており、その後葛城氏が文部科学省に出向された後も定期的に情報交換をしてきた。その葛城氏が2年の出向期間を終え、文部科学省を退職する日にこのインタビューが行われたのは、何かの運命なのかもしれない。

高大接続システム会議「最終報告」の背景、最終報告後のこれからの方向性について存分に語っていただいた。

katsuragi

インタビューは葛城氏の出社最終日に、文部科学省の会議室で行われた

大学入試センター試験の改革と、各大学の個別選抜の改革の違いは?

– いよいよ最終報告ですね。まずは2年間お疲れ様でした。

葛城:はい、ついに最終報告まできました。今までいろいろありましたね。

– そもそも、葛城さんが文部科学省に出向されたのはどのような経緯があったのでしょうか?

葛城:私は、楽天の人事部で長い間社員教育に携わってきました。また、社長の三木谷が英語の社内公用語化を決めた時も、そのプロジェクトの責任者として社内での英語研修も含めて推進してきました。その時に、そもそも社会人になる前に、学生時代にあれだけ英語を勉強してきているのだから、学校での学びをより良いものに出来ないかという気持ちが湧いてきました。そんな時に、文部科学省で公募があったため、それに応募して、2014年5月から出向することになりました。

– そういうことだったのですね。確かに、学生時代に実用的な英語を学べば、社会人になってからそこまで苦労しなくてもよくなるかもしれません。

葛城:今の学校における英語教育がダメかというと、全部ダメだとは思っておりません。英語を習得するのに2,400時間程度の学習時間が必要と言われておりますが、一般的な小学校・中学校・高等学校を通じた英語の合計授業時間は1,000時間程度です。そのため、残りの1,400時間は学校外で勉強する必要があります。これは「だから塾に行ってください」ということではなく、学校以外でも適切なやり方で自主学習をしてもらえるようになってほしいと思っています。そのため、学校の授業においても児童・生徒が自分で英語を勉強する方法を伝えて頂きたいと思っております。

– この2年間、高大接続システム改革会議英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会の2つが同時並行で走っていて、傍目からみると関係が分かりづらかったと感じているのですが、これらはどう整理されるのでしょうか?

葛城:大学受験をする場合、「大学入試センター試験」と「各大学の個別選抜」の2つを受けるのが一般的だと思います。大学入試センター試験と各大学の個別選抜のどちらを4技能にしようか?と考えた場合、もちろん両方がベストですが、極端な話どちらか一方が4技能になっただけでも学校の授業へのインパクトがあります。「高大接続システム改革会議」は大学入試センター試験の後継である新テスト、「英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」は主に各大学の個別選抜の4技能化について協議してきました。

– なるほどですね。

葛城:大学入試センター試験と各大学の個別選抜では、改革の時間軸も異なります。各大学の個別選抜は、大学が導入決定をしてくだされば、今からでも導入できるわけです。上智大学立教大学などが先鞭を切ってくれました。また、本日、鹿児島大学が一般入試、推薦入試Ⅱにおいて民間の英語試験を全学部で導入することを発表されました。全学部の導入は国立大学(総合大学)では初となります。一方、大学入試センター試験はすぐには変えられません。56万人が同日に受験して、各大学がその点数を利用するインフラに近いテストだからです。だから2つが同時並行で走っているのです。

各大学の個別選抜での4技能試験の活用は進むのか?

– 理解できました。大学入試センター試験の改革は2020年度として、それまでは各大学の個別選抜での活用に期待だと思うのですが、大学にとって民間の試験を活用するメリットはあるのでしょうか。

葛城:大学からすると、4技能試験を活用した入試制度を設けることで、今まで受験してくれなかった層の受験者が受験してくれる、というメリットがあると思います。例えば、TEAPでCEFR B2のスコアを持っている高校生がいるとします。その場合、TEAPスコアを利用できる大学をいくつか併願してくれる可能性が高いのではないでしょうか。

また、それだけではありません。最終報告の大学教育改革をご覧いただきたいのですが、各大学に三つの方針(編集部注:ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)、教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)のこと)の策定をお願いしています。三つの方針を作ろうとしたら、当然グローバル人材の育成や発信型スキルの教育は入ってきますよね。

大学教育改革

出典:文部科学省ホームページ 高大接続システム改革会議(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/064/index.htm)

– おお!

葛城:三つの方針で発信型スキルが重要と言っておいて、入学試験は2技能だと、言っていることとやっていることが違うとなりかねない。よって、大学での4技能試験の利用は促進されると考えております。また、先日(3/25)に実施いたしました「英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」において調査研究発表がありました通り、民間の4技能試験の受験者層は、英語力も高く、学習意欲も高い。このような学生を確保したいと考える大学は今以上に増えてくるはずです。

– これはすごいですね。やっぱり、高大接続は大学入試改革だけで考えると理解できない。高校での教育改革、大学での教育改革、大学入試改革が三位一体となっていますね。

葛城:そういうことですね。

大学入試センター試験の後継、学力評価テスト(仮称)の全貌

– 続いて大学入試センター試験の新テストについて聞かせてください。これは一般論として受け取っていただきたいのですが、高大接続の最終報告のはずなのに「引き続き検討する」の項目が多すぎる気がします。

葛城:それはもちろん全員理解しています。ただ、冒頭にお話しした通り、大学入試センター試験は56万人が同時に受験する試験です。社会的に与える影響があまりにも大きいので、確実性の高いことしか方向性として示せないという実務上の制約があります。

– 承知いたしました。詳細は2017年度初頭の「実施方針」で公表されるということだと思いますので、もう一年待ちます。それでも、少しでも具体的な内容が知りたい。「英語に関する10の論点」というのを作ってきたので、順に質問してもいいでしょうか?

葛城:はい、いいですよ笑

– 最終報告に記載されている内容以外は回答しづらいと思いますので、未回答もOKです。1つ目です。民間の外部検定試験を活用するか、国と民間で新たな試験を新規で作成するかについてはどちらになるのでしょうか?

葛城:私たちも様々な方法を検討しました。主な方法としては「国が全部やる」、「国と民間で一緒にやる」、「民間に完全に委託する」の3つの選択肢があると思います。国が全部自前でやるのは、今の体制や予算では実務上難しい状況です。一方、民間に完全に委託するのは受験地の平等性等の観点から難しい可能性があります。よって、国と民間で一緒にやるというのが現実的ではないかと考えております。これは中間まとめでも明確に示されていたかと思います。

– これは明確ですね。2つ目。複数回実施の線はもう消えているということでいいでしょうか?

葛城:これも最終報告通りですね。2020年度の開始時点においては難しいですが、今後の技術革新などで複数回実施が可能になる可能性もありますので、未来永劫ないという話ではありません。

– はい。3つ目にいきます。実施時期は記述式とマークシート式は同日でしょうか? それとも別日程でしょうか?

葛城:検討中です。来年の実施方針で示されると思います。英語のライティングと、他の科目(国語・数学)の記述式は、ほぼ同じ方法で実施可能と思われます。そのため、ここは関連性があると考えていただいて構いません。また、国語・数学の記述式が別日程で実施する場合は、英語のスピーキングにおいてもそれと同日に同一会場で実施することも検討選択肢の1つです。

– 4つ目は、試験をCBT(Computer Based Testing)で行うか紙ベースで行うか、どちらかを教えてください。

葛城:まずはCBTと紙のそれぞれのメリットデメリットを整理しましょう。採点はCBTの方が楽です。一方、インフラ整備をコスト面から考えますと現時点では、紙ベースの方が現実的です。年に一回しか使わない機器を56万人同じ条件で揃えるとなると、莫大な予算が必要となります。だだし、技術革新による将来的な機器のコストダウン等も考えられますので、最終報告にも記載されている通り、2020年度~2023年度は紙ベース(CBTは試行)、2024年度以降でCBT導入というのが最も可能性が高い実施方法です。

– これに関連して5つ目です。スピーキング問題は面接と録音のどちらの形式でしょうか?

葛城:面接にした場合、56万人を面接する面接官を一度に、もしくは複数に分けて集めるのは実務上困難と思われます。また、面接型の方が録音型に比べてより多くのスペースが必要になります。よって現実的に考えると、ICレコーダーやタブレット型PCなどに音声吹き込みの形というのが現実的なプランの1つと思われます。

– スピーキングについて深堀りさせてください。6つ目、スピーキングの実施年度のみ1年遅らせることもありえるのでしょうか?

葛城:もちろん、4技能でやりたいという基本線は変わっていません。ただし、4技能のうちスピーキングは特に実施と採点が難しいです。ライティングは、先ほど申し上げたように他の科目の記述式とほぼ同じ方法で実施可能ですので、記述式と同じ実施年度で施行されると思いますが、スピーキングは難易度が高いため十分な検証が必要となり、そういう話が最終報告に盛り込まれています。

– 続けて7つ目、ライティングを含む記述式と、スピーキングはどのように採点するのでしょうか?

葛城:ここは実施時期と密接に絡んだ論点ですね。AI(人工知能)について最終報告案に一度明記して紛糾してしまいましたが、全部システムで採点したいということではありませんでした。採点作業の補助としての活用をイメージしておりました。例えば英語の試験においては、スペルチェックや文法間違いチェックといった部分でシステムを活用すれば、より効率的に採点できるのでは、という意図でした。2020年へ向けて技術革新がさらに進むことは間違いないので、現在の技術レベルで議論すべきかという難しさもあります。

– 8つ目です。受検料はいくらになるのでしょうか?現在の大学入試センター試験は3教科以上で18,000円です。

葛城:記述式と英語4技能が入ると、もう少し高くしないと実施が難しいという意見も出されました。

– 少し細かい話になるのですが、9つ目です、4技能の配点は均等なのでしょうか?

葛城:重要なことではありますが、それは協議の後半の方でも決められる内容ですね。まずは、実施内容および実施方法について固めることが先決だと思います。

– 最後です。10個目、4技能の教育を受けてきていない教師が、4技能を教えられるのかという懸念についてはいかがでしょうか?

葛城:まず、大学入試センター試験は1990年から実施されています。その時点ではリーディングのみの1技能ですね。その後、2006年度からリスニングが導入されました。リスニングが大学入試センター試験に導入されたことにより、教育現場でリスニングの勉強をする良いウォッシュバック効果が起こりました。それを今回の4技能化でも期待しています。もちろん教師の皆様に丸投げするのではなく、教師の皆様と一緒に4技能をどう教えるかを試行錯誤していこう、というスタンスです。

– 英語に関する10の論点は以上です、明確にご回答いただきありがとうございました。

葛城:とはいえ、最終報告はあくまで現時点での方向性ですので、詳細は実施方針で決定することになりますのでその点はご留意ください。

今後どうなるか、葛城氏が高大接続最終報告に託した5つの願い

– さて、これまでの2年間と最終報告について振り返ってきました。最終報告を終えた「これから」について聞かせてください。

葛城:今後どうしていくべきか、私は5つのことを考えています。

1つ目は、官と民の協力は不可欠だということです。これは、4技能試験を運営している試験運営団体との協力だけではなく、試験のオペレーションのみを請け負う民間企業を検討しても良いのではと思っております。私自身、楽天から文科省に出向して、民間企業での仕事の進め方や楽天の社内公用語化のノウハウを国にお伝えできればと思いやってきました。もっと民間企業のノウハウを活用し、巻き込んで進めていくべきです。

2つ目は、これまでの大学入試センター試験の「56万人が同日に受験して一点刻みで採点する」というやり方にとらわれすぎないことです。記述式を別日程にすることを含めてもっと柔軟に検討していただきたいです。また、記述式やスピーキングの採点という観点からは、点数評価だけではなく、段階別評価や合否判定型の形も考えても良いと思っています。

3つ目は、自動採点の活用です。先ほどスピーキングの採点のときにお話ししましたが、スペルミスや文法構造のチェック等において、タイトな採点期間を考えると採点補助としてシステムを活用しない手はないと思っております。

4つ目は、試験実施におけるトラブルに対する国民の理解が必要だということです。例えば、今年度、リスニング機器のトラブルで再試験になった方は253名ですが、これは全体の受験者数から見れば約0.05%になります。機械工学に精通されている方であればご理解いただけると思うのですが、56万人に対して行う試験で機械を操作して、0.05%のトラブルという数字はとても低い数字です。最高品質の機器をリスニングでは使用しています。これを、0%に近づけるにはあまりにコストがかかりすぎてしまい、それは受験料に反映されてしまいます。スピーキングをICレコーダーなどを使用して行った場合、リスニングよりもトラブルが起こる可能性があります。もちろん入学者選抜としての厳密性は担保する必要はありますが、それも含めて4技能化なんだと理解いただけるとありがたいです。

5つ目は、各大学の個別選抜における民間の4技能試験活用を更に進めていくことです。これは、文科省や試験運営団体が適切で有効な情報を大学に適宜お伝えしたり、シンポジウム等を開くことで活用の有効性を共有していくことが重要と考えております。

– ありがとうございます。本日お話をお伺いして、確実に日本の英語教育が前進していると感じました。葛城さんなくして、この2年間の前進はなかったと思っています。

葛城:いえ、皆様のご協力のおかげです。私がお伝えしたいことは、先ほどお話しした「5つのこれから」になりますので、こちらを託して本日のインタビューを終えられればと思います。

– ベストティーチャー代表宮地の取材後記 –

戦後最大の教育改革と言われる2020年度の大学入試改革の最終報告が遂に公開されました。引き続き2017年度初頭まで検討する項目もありますが、方向性は当初のビジョンからぶれてないと私は考えています。また、英語の4技能化も新センター試験を待たずに各大学の個別選抜で行われつつありますし、いずれは必ず浸透することです。ベストティーチャーは引き続き本メディア4skills英語4技能対策コースを通して、4技能の普及と対策に注力していきます。

  • 4技能試験対策スクール

タグ一覧

人気記事

1
4技能試験の概要/特徴

TEAPの概要・配点・難易度とメリット・デメリット

2
学習法・勉強法

英語で小論文を書きたい人必見!英作文が上手くなる3つの方法

3
2017年4月入学入試

【2017年4月入学入試】TEAP利用型入試で上智大学に合格したいなら初めに読む記事

4
学習法・勉強法

英検2級ライティング問題で7割取れる英作文を書く7つのコツ

5
学習法・勉強法

【旧形式】英検準1級一次試験の開始後20分で14点満点中10点を取れる英作文を書く7つのコツ