公立高校入試も英語4技能試験を導入!大阪府では3種類採用も課題は残る

公立高校の入試に、英語民間試験の導入を進める自治体が出てきました。グローバル化の進展を見据え、現行の入試では測ることのできない「話す力」を評価するのが主な狙いです。

大学入試での英語民間試験活用は、2020年度に始まる新テストでも行われることが決定していますが、経済的、地理的観点から、受験機会が不公平であるという問題が指摘されています。

今回の公立高校入試の民間試験導入は、大阪府は2017年度から、福井県では2018年度からとなりますが、そこでも同様の問題が指摘されており、課題含みのスタートといえそうです。

※大学入試新テストについては2020年大学入試新テスト(共通テスト)の概要をまとめてみたをご覧ください。

英語民間試験導入の概要

大阪府では、今年2月の府立高校入試で初めて「英検®️」「TOEFL」「IELTS」の3種類の民間試験を導入しました。英検準1級合格やTOEFL60点以上、あるいはIELTS6.0以上の成績を満点にみなすなど、各試験の評価を点数に換算し、高校入試当日の従来型の試験(筆記、リスニング)と比べ、良い方を合否判定に用います。(両方の試験を受験する必要があります)

英語民間試験を利用するかどうかは受験者自身が決定することができ、第1回目である今年の入試では全受験者の7%、約350人の生徒が利用しました。

(表)大阪府公立高校入試での英語民間試験活用法

また大阪府は、教育委員会が「府立高校の英語学力検査問題改革」を発表しており、従来型の試験に関しても、問題文をすべて英語にするほか、「聞く」「書く」の配点を合わせて50%にし、さらに1分間に読む語数を2.7倍にするなど、「4技能を駆使する英語力の育成」に力を入れています。

※今回の試験問題の改革は大阪府教育委員会が作成する「基礎的問題」、「標準的問題」、「発展的問題」の3種類(使用する問題の種類は各高校が決める)のうち、「発展的問題」のみです。詳細については大阪府立高等学校の英語学力検査問題改革についてを参照してください。

福井県では、2018年度入試より県立高校入試で「英検」が活用されます。全体を100点満点とし、英検3級取得者に5点、準2級10点、2級以上15点の加算を行うとしています。(ただし100点を超えないものとします。)取得者には最大15点のアドバンテージがあるため、その影響は少なくないでしょう。

格差が広がるという懸念の声も

しかし、公立高校の4技能化には大学入試新テストの場合と同様に、様々な懸念も挙げられています。主なものは以下の通りです。

  • 受験料や塾通いに関する経済的格差の懸念
  • 受験会場が都市部に集中する際の地理的格差
  • 経済的格差、地理的格差による受験機会の不公平性

中学校での英語の授業はすでに学習カリキュラムが詰まっており、学校で追加の民間試験対策を行うことは難しいのが現状です。そのため、公立高校入試での民間試験活用は、塾に通っている経済的に恵まれた生徒に有利に働くのでは、という指摘があります。

また、民間試験は数多く実施されていますが、全国に広く会場を設置している試験はごく一部です。さらに、民間試験は何度でも受験することができますが、受験費の負担や交通費の負担が経済状況や居住地によって違ってくるため、受験の機会が実質的に不公平になるのではないかという指摘です。

経済的、地理的な格差に基づく受験準備や受験機会の不公平性が、大きな懸念として指摘されています。

各自治体の対策も進む

上記の懸念の声に対し、大阪府では一部の市で受験料を補助する対策を行なっています。また福井県も、県の中学3年生を対象に受験料1回分を補助し受験を促してきました。

同県ではさらに、県教育委員会主催の英検対策講座の実施や、中学校が英検の受験会場となる場合の試験監督体制の支援、中学校の外国人指導教員(ALT)増員などの計画が示されています。

それでも残る懸念、今後の見通しは

一部の自治体では対策がとられているものの、今後公立高校入試での英語民間試験活用が広がるかどうかは現状微妙です。公立高校入試への英語民間試験の導入は、東京都や山形県でも提案されていましたが、すでに述べたような懸念から、検討は進んでいません。

しかし、英語が小学校で教科化され、大学入試でも4技能が重視される中、公立高校入試でも英語4技能を測るという考え方には、一定の説得力があると言えるでしょう。

もし高校入試を4技能化した自治体とそうではない自治体の間で、今後実施される大学入学共通テスト(新テスト)の英語の成績に差が生じるようなことがあれば、高校入試の4技能化が一気に進む事態もありえます。今後の動向については、当サイトにて随時お伝えしてまいります。

英検®及び英検CBT®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

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