入試で4技能試験を積極的に活用する金沢大学の英語教育に迫る!教育担当理事インタビュー

沢大学は2018年度、人間社会学域,理工学域及び医薬保健学域の多くの学類において、英語4技能試験を活用することを発表しました。

※対象となる選抜方法や日程区分は、学類によって異なります。詳細は、金沢大学のWebサイトの「入試情報でご確認ください。

利用対象となる学類・試験区分においては、活用可能な選抜方法に出願する受験生が、対象となる英語外部試験のスコアを出願時に提出していれば、そのスコアが既定の換算方法で得点化され、センター試験の英語の得点と比べていずれか高い方の得点が採用されます。(スコアの換算方法については下記の表をご覧ください。)

また、医薬保健学域医学類 推薦入試Ⅱについては、上記対象試験についてCEFRのC1 相当以上のスコアを提出すると、最終的な合否を決める総合評価に反映させます。なお、外部試験のスコアを提出する場合であっても、大学入試センター試験で「英語」を受験する必要がありますのでご注意ください。

今回はこのような制度の導入に至った背景や金沢大学の英語教育への取り組みについて、教育担当理事の柴田正良教授にお話を伺いました。

英語4技能試験をこのような形で導入した理由を教えてください。

英語4技能試験の大学入試への導入が全国的に広まった時には、基準のスコアを超えていれば皆満点扱いをする場合や、特定の選抜試験を受ける条件として活用する場合が多かったように思います。

しかし、本学では、英語4技能試験を入試の補助としてではなく、一つのスケールとして正式に採用できる試験であると考えています。つまり、一つの独立した信頼性の高い試験であるという評価をしたというわけです。したがって、そのスコアを客観的に反映させるため、数種類の英語4技能試験を、独自の換算表を使ってセンター試験と対応させます。

今後、全国的に大学入試は変わっていきますね。それに伴い、日本の英語入試はどのように変わっていくとお考えですか。

センター試験を英語4技能試験に切り替えるという方針に賛成します。問題の形式は民間の試験に任せて良いと考えていますが、幾つか問題もあると思います。一つは、今ある試験が必ずしも高校の英語の授業内容に沿ったものではないということです。日本の高校の英語教育に沿った民間の4技能試験が、作られると良いと思いますね。

また、受験料が総じて高いため、生徒の負担となってしまう点も問題だと感じます。さらに言えば、現在の民間の検定試験は必ずしも4技能ではありませんが、今後を考えると全て4技能試験にするべきでしょう。CEFRなどとの換算表に関しても数種類あり、どれをどう使うべきか一定の見解が出ていないことが問題でしょうか。偏った見方になってしまうといけないので、複数の換算表に基づくべきだとは思いますが、文科省が大学入試に民間の複数の検定試験を採用するのであれば、それらの換算表に関しては、大雑把な作り方ではなく、きちんとした責任を持った基準に従って作っていただきたいと思います。

柴田先生ご自身の、日本の英語教育に対する考え方をお聞かせください。

日本の英語教育は成功してきたとは言えないと思います。学生たちを見ていて、大学まで英語を学び続けているのにも拘わらず、英語を聞く、話す能力が低いと感じています。反対に、文献を読む能力が高い学生は多いですね。これを踏まえ、日本の英語教育は読むことと書くことに重点を置きすぎたと感じます。特に、読むことですね。

話は遡りますが、日本は戦後、外国の文化、特に英米系の文化に追いつきたい、そして追い抜きたいという気持ちで頑張ってきました。つまり、外国と意見を言い合い理解し合うことより、外国の文化を吸収することを大切にしてきたのです。

そのため日本人は、外に向かって発信すること、意見を形成して話すこと、英語で聞き取ってそれに答えるという能力を高めることを怠ってきました。まずはそこを直さなければいけません。近年の「4技能が大切だ」という動きには、このような過去への反省が込められていると思います。

金沢大学_授業風景

貴学の英語教育への取り組みを教えてください。

2014年度に文科省が選定するスーパーグローバル大学(SGU)に採択されたのを機に、英語教育を大幅に転換しました。本学には、TOEICをターゲットとした授業があります。本学の学生は1年次、3年次、そして大学院に進学する場合は院の1年次に英語外部検定試験を必ず受験することになっており、特に1年生はそのスコアがTOEIC対策クラスの成績の判断基準となります。

その受験料は、今は大学側で補助をしています。今後は4技能すべてを測ることができる試験を義務化したいですね。また、平成35年には平均値で、学士課程の授業の半分を英語で行うという計画を立て、進めている最中です。英語で「アクティブ・ラーニング」の部分をこなせていけたら良いと思っています。大学院では原則、すべての授業を英語で行う形にシフトする予定です。

最後に、受験を控えている高校生へのメッセージをお願いいたします。

多くの人が英語を学んでいるのは、英語が言語として優れているからではなく、世界中で使える言語であるからです。ですから、英語は受験においてだけでなく、将来、皆さんが就職してからも役に立つと思います。このことを心に留めて、頑張っていただきたいですね。また、英語を学んでいると自然に、英語圏の文化や伝統に触れることになります。受験勉強を通してそういうものに興味を持ち、英語を使う人々の心を愛して欲しいと思っています。

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