英語は第二公用語になる可能性がある

連載:今さら聞けない、英語4技能って何?

第5回: 英語は第二公用語になる可能性がある

連載第五回

日本人にとって英語の占める意味が変わってきたのに応じるように、これまで見られなかったほど大幅な英語教育の変化が既に始まっています。そして、このような社会情勢の変化を背景に進められようとしている今回の英語教育の改革では、英語に対する考え方にも大きな変化が見られます。つまり、これまでのように英語を「外国語」として学ぶという姿勢ではなく、「日常語」のひとつとして英語を学ぶ考え方に変えていこうという動きがあります。いわば、「第二の国語」として英語を習得するということです。

実は、この考え方は早くも2000年に政府がまとめた報告書(*1)に明確に示されていました。この報告書では、21世紀の世界の動きとして「グローバル化」「グローバル・リテラシー(国際対話能力)」「情報技術(IT)革命」「科学技術の進化」「少子高齢化」の5つをあげ、その中でも特に21世紀の日本にとっては「グローバル・リテラシー」と「情報技術革命」に対応する力が重要だと述べています。

*1 当時の小渕総理の私的懇談会がまとめた『21世紀日本の構想』という報告書

そこで、このような21世紀に予想される変化に対応するためには、国民の大半が情報技術を使いこなせるように情報技術教育を格段に強化することや、英語の実用能力を身につけることが必要で、社会人になるまでに日本人全員がITや実用英語を使いこなせる力を身につけるようにするという具体的な到達目標を設定しています。英語については、英語教育をこれまでのように外国語教育の問題と考えるのではなく、将来的には英語を「第二公用語」にすることも考えて、日本の戦略課題として考えることが大切だという主張です。ここでは英語を、日本語に続く「第二の実用語」として日常的に併用すべきものとしています。

この主張は、発表直後に小渕総理が急病となり内閣が総辞職したため、具体的な施策となることはありませんでしたが、ここに盛り込まれた考え方は現在の安倍内閣にも引き継がれています。内閣の政策を検討する会議(*2)や、学校教育をどのようにしていくかを検討する中央教育審議会の答申(文部科学大臣が検討を依頼したテーマについて、関係者が検討結果をまとめた報告書)(*3)などでは、このことについてより明確な方向性が示されています。

*2 「産業競争力会議」や「英語教育の在り方に関する有識者会議」など。

*3 2008年「学士課程教育の構築に向けて」、2016年「個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について」、同年「次期学習指導要領『論点整理』」など。

このような動きの中で、2011年からは小学校5・6年生を対象とした英語教育(正確には、「英語活動」)が始まりました。さらに今後は、英語活動を小学校3・4年生へと拡大したり、5・6年生の英語については「教科」として成績評価を行うことが示されています。小学校3・4年生といえば英語どころか国語の基礎的な力を養う時期ですから、このような基本的な言葉の力を育てる時期に国語と英語を同時に学ぶという動きは、まさに英語を「第二公用語」とする考え方だといえるのではないでしょうか。

なお、もうひとつの柱である「ITリテラシー」の育成については、2020年から小学校で「プログラム教育」を必修にすることが決まっています。

中教審


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