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教育者インタビュー

完全国内独学の同時通訳者・横山カズの源流「自分を主人公にする英語」

2015.11.09
横山カズ横山カズ
同時通訳者、翻訳家。「英語サプリ」(リクルート)講師。『最強の英語独習メソッド パワー音読入門』(アルク)著者。

小学生時代にテレビで見た同時通訳者の仕事ぶりに衝撃を受け、完全国内独学で同時通訳者となる。「感情」「スピード」「反復」「集中」の4つの力を利用する「パワー音読(POD)」を提唱。現在は医療、環境、IT、政治等多彩な分野で国際会議及び記者会見で同時通訳を担当する。英語社内公用語化で有名な大手IT企業R社のスピーキング講師。また、東進ハイスクールでは特別講師として、音読を中心に置いた独自の指導を展開、受験生から強い支持を得る。英検1級、国際英語コミュニケーション能力検定(ICEE)2012年優勝者。

今回は、留学をせずに同時通訳者になられた横山カズさんに、4技能で英語を学んでいく重要性、日本にいながらにして英語を話せるようになるコツを伺った。

海外留学しないで英語学習

-日本で英語を勉強することは難しくありませんでしたか?

やはり最初は大変でした。学びたいという気持ちを周囲の大人たちに相談してみましたが “それは、お父さんが外国の会社で働いているとか、特定の境遇にいる子にしかできないことだ”と言われ続けまして、子供ながらに胸が痛んだものです。しかし、いま振り返ってみれば、日本にいながらにして自分でできる練習は本当にたくさんあったのだと思います。自分がしそうなミスは練習でできる限り多くやってしまおう、と考えるようになりました。つまずいたり転んだりしながら英語を勉強しているうちに、もっと英語を使ってみたい、自分の英語をもっと磨きたいという思いが強くなりました。

ただ私の場合、英語を学ぶ喜びを教えてくれる授業が学校にはありませんでした。英語を自由に使うことに対する渇望は、本当に強かったのですが。それがとても残念でしたね。なので独学でやるしかなかったんです。

-具体的にどのように英語を勉強したのですか?

学生時代、生活費と学費のために外国人向けのナイトクラブのバウンサー(トラブル対応業務)として働いたんです。英語も今ほどできず、武道や格闘技の経験を買われたわけなのですが…ただそこでいろいろなことに気づきました。そこでは本当に毎週のように、国籍を問わずけんかやトラブルがありました。簡単に言うと、英語ができるほど喧嘩などのトラブルを未然に防ぐことができるんです。そして怒ったり、喜んだりして感情が高ぶっているとき、人はだれでも自然と語彙のレベルが下がって、使う語彙が限られてしまうということに気が付きました。そういうときに使う語彙は、小さい時から大人になるまでずっとお世話になる語彙なんですね。誰もが平等に使う単語や表現たちです。なので、そこの単語を拾っていけるように意識しました。自分の感情や思いが投影された英語を身に付けることで、アイデンティティが見えてくることにも気が付きました。

学習書や参考書を読み漁っていた時期もありましたが、それはみんながやっていることです。そこで私は、国内で英語をマスターした人たちを観察しました。すると共通点があるんです。面白いことに、その上手な人たちはほぼ例外なく、皆の見ていないところで熱心に音読をされていたんです。そこから音読を取り入れ、夢中で練習しました。

ただ音読の方法は一人一人違いがありました。各自が秘伝としていて見せないんですね。なので、なかばストーカーのようになって、技を盗んでいきました。それらの良い部分を私は組み合わせ、また独自の工夫も加え、練習法を体系づけていきました。これは、拙著の 『パワー音読入門』の出版の経緯でもあります。

日本の英語教育の現状

-インプット中心の日本の英語教育に感じることはありますか?

英語の4技能を伸ばすにしても、最初に“元手”としての英語の知識や語彙をある程度覚える必要があるので、今あるインプット中心の英語授業も大切だと思いますが、そこで覚えたことをしっかり出す練習ができれば、4技能化もよりスムーズにいくはずです。アウトプットをする環境がもっと必要になりますね。様々な工夫によって、アウトプットがより簡単にできる環境を作り出していく必要がありますね。

-英語学習は今後どのように変わっていかなければいけないのでしょうか?

現在、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能で英語を学ぶ流れがあり、素晴らしいことだと思います。4技能を伸ばすには様々なメソッドがあると思いますが、私は究極的には「英語学習は1技能」だと考えます。それは、あくまで自分を主人公にして、自分の情緒や感情を「英語で “思う” 力」が必要だということです。

「思う」という行為は心の中で無意識に、瞬間的に起こります。一説によれば、人間は1日10万回ほども何かを “思って” いるそうです。「考える」手前のもう一段深く心とつながっているのが、「思う」ことです。その回路と英語を音読によってつないでいきます。すると1日何千回、何万回と英語で思うことができるようになります。まずその回路を、基本的な語彙の音読によって狭く深くインストールします。英語と自分の気持ちや感情をつないで、取れなくなるようにするんです。そうして英語が使いやすくなるにしたがって、まるでお腹がすくようにより多くの英語に触れたくなってきます。パッシブな学習がアクティブな習慣に変わる瞬間ですね。語彙も増え、発音などの練習にも前向きに意欲をもって取り組めます。これでモチベーションの心配がなくなりますね。

英語で”思う”ことができるようになれば、無理にではなく自然と英語を勉強したくなるわけです。それはまさに4技能を心が求めているわけです。”思う力” をコアとすると、”出口” が4つ(「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能)あるイメージです。リーディングやリスニングでは自分の心に響く表現を ”宝さがし” する楽しみができます。それらの自分の心とつながり合った表現は、近い将来自分の口から発せられることになるわけです。こうして自然に個性やアイデンティティが英語に乗り移っていきます。主人公はあくまで自分自身なのです。

瞬間的に英語を “思いつく” ためには、最初に心に響く表現を厳選して、その一つの表現を通し、できるだけたくさんの感情や思い出を去来させることです。そうすることによって、一つの表現でも、驚くほど多くの可能性を持つことになります。着回しがきき、ラフに着こなせる “普段着の英語” ですね。この限られた語を状況に応じて使いまわす力が、本当に重要です。語彙を増やしていくことも大切ですが、実際に使うことができる語彙は限られています。なので、自分を主人公にして、自分の使う語彙や表現を身体にしみ込ませます。そこから上達のドアは自然に開いていきます。

-学校の授業ではスピーキングの授業もありますが、狙い通りに働いているのでしょうか?

英語を話す環境が整備されつつあることは本当に素晴らしいですね。身体で上達を感じ、アウトプットが上手くいくと、自然と生徒さんたちも「もっと自分の英語力を試したい」と思うものです。語彙も同じですね。ある程度自分の考えを伝え、相手の言葉を聞き取れるようになったときに、無理をせずとも語彙を増やしたくなります。なので、スピーキングの授業を受けることが楽しみになるような練習方法やカリキュラムが重要ですね。先生が技を伝え、また生徒さんとともに練習を楽しむことが大切だと思います。その授業自体がコミュニケーションの理想的な練習にもなっていきます。

東京外国人記者クラブ同時通訳

大学入試改革と4技能英語学習

-大学入試改革によって4技能英語学習が進められています。どのように思われますか?

私は、4技能化に賛成です。大学入試で4技能試験が適用されると、中学校や高校の先生たちも4技能試験の対策を研究されるようになると思います。結果として、日本全体の英語の運用能力は上がっていくことでしょう。これはとても良い流れですね。大学入試の4技能化によって、一貫した教育システムとして英語教育システムが連動するようになります。入試がそのまま英語の運用能力につながるわけです。大学に入学した時点で英語が話せるようになっているのは本当に素晴らしいことだと思います。忘れると消えてしまう知識としてだけではなく、失われることのない”能力”としての英語が手に入ります。自転車は体力が落ちても運転することは可能ですよね? ここを私は重視します。私が学生だった頃、そんなシステムがあればどんなに良かったことだろう、と思います。

-4技能で英語を学ぶ必要性は何ですか?

私が英語を勉強し始めたときは、「発音ができるようになると聞き取りが楽になる」などの基本的な4技能間の相互作用についてさえ、まだ知りませんでした。大学入試の4技能化もそうですが、英語を4技能で学ぶことは、知るだけじゃなく、使う楽しみがあるということです。自分の身体で上達の喜びを感じ、必ず相手がいるわけですね。その過程で自分や相手の中に眠っていた様々な能力や魅力に気づくことができます例えば、様々なトピックに関して、インターネットなどを使って一歩踏み込んで追いかけてみたり、好きな内容の英文記事を読んでみようと思う人が増えると思います。またSNSを利用し英語で友達を作るのもいいでしょう。

英語のクラスだけじゃなく、他教科も、部活も、趣味も、時には恋愛も全て英語でできるようになっていきます。4技能をみがくことによって、あくまで自分を主人公にして道を切り開いていけるわけです。広がる視野も、得られる気づきも、それは4技能を通して得た自分の学習の結果です。当然それは英語にとどまらず、自分に自信をつけることにもつながります。このような学び方であれば、英語は様々な人の心のニーズに応える可能性を秘めていると私は考えます。また、その得られた能力は、もちろん海外で働くときなどにダイレクトに威力を発揮してくれます。あくまで4技能英語学習は自分が行動するためものなのですね。

-2技能で英語を学ぶのと何が違うのでしょうか?

2技能だと、知識の集積に終始してしまうことになります。パソコンにインストールしたファイルがどんどん増えていく感じですね。それ自体は良いのですが、問題はパソコン自体の性能が悪いと、いくら便利なアプリやツールがあっても使うことができません。ファイルはなかなか開かないし、イライラすることになります。リアルタイムのコミュニケーションはすごい速さで進んでいきます。取り残されないためにも、やっぱりパソコンはサクサク動いた方が良いです。4技能だと、ファイルを増やしつつパソコンの性能は上がり続けるわけです。”最近使ったファイル”のように、よく使う言葉はひときわ滑らか口をついて出てきます。自動化された言語としての習得をするわけですね。なので、4技能の英語教育のイメージは、パソコンの性能を上げることというイメージです。インプットがアウトプットを活かし、アウトプットがインプットを活かしてくれます。

4技能での英語教育は、学ぶ誰もが「もっと英語を勉強したい」と思える教育だと思います。能動的に人生を切り開くための自信を手に入れる手段でもあります。一度生徒さんが楽しいと思ってしまえば、もう上達は止まりませんね。雪だるま式に英語の運用能力が身に付いていきます。

留学しないでがんばっている人へ

-英語を勉強する上でのアドバイスをお願いします。

まずは、リーディングやリスニングで自分の感情を中心に英語の “宝さがし” をしてください。そのヒントとして普段自分が日本語でやっている友人などとの会話をスマホで録音するのがおすすめです。自分でもショックなほど話の内容やパターンは決まっているものです。これは実は若い人でも同じです。それを参考に、よく似た表現を英語で拾っていきます。これでリーディングもアクティブで楽しいものになります。主人公は自分の気持ちですからね! 自分の性格や感情にフィットする表現や語彙を含んだ文を見つけては、それを音読してみましょう。その覚えやすさに感動ものですよ! そして様々な感情を込め、トーンや速度を変えながら、英語を心の奥深くに練り込んでいきます。心の中に映画のスクリーンがあるように、英語とイメージがつながっていきます。日本語が頭の中からいったんなくなるまでやりましょう。英語を目で見て、口で言い、耳に入れ、心とつなぐ、というプロセスを短時間でできるだけ多く繰り返すわけです。“分量少なく、回数多く”がコツです。1~3分までで十分です。

構造が複雑な文は、名詞節をペンで囲んで、名詞節を一つの意味のかたまりとして認識し、まずはそこだけを繰り返し音読します。すると名詞節をひとつの単語として把握でき、英文全体を先頭から簡単に理解できるようになります。具体的な自動化の方法ですね。音読を続けると、英文の理解が早くなり、自然にリスニングが伸びます。そうすると、今までリスニングに使っていた集中力を、スピーキングなど、他のところに使えるようになります。これでさらに英語の吸収力が格段に上がります。音読によってスピーキングのベースを作って、そこに様々な能力を肉付けしていくイメージです。肉付けしたくなってきます。これが私が音読をすすめている理由です。

あと、英語を話すときに、無生物主語を見つけては使ってみてください。 “モノには全て人格がある” と考えます。たとえば、“If I drink coffee, I can wake up quickly.”ではなく、“This coffee wakes me up.”と言ってみます。そうすると英文がとても引き締まり、発想のカラを破る力が手に入ります。

あくまで自分を主人公にして、自分の心に響く表現やトピックを追いかけきましょう。自分の情緒や興味は4技能学習の最大の燃料です。嫌なこともつらい経験も英語の上達の味方なんです。ネガティブなことも上達につながっているとわかっていれば、気持ちは自然にポジティブになっていきます。この喜びがあれば 「英語が好き」“I like English.”を超えて、 「英語に好かれる」“English likes me.”の心境になれると思います。あ、これも無生物主語でしたね! ともに、楽しんでいきましょう!

国際文化会館で安河内先生と (1)

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