英語マナー講師、横手尚子氏が語る「英語力を伸ばす環境の作り方」

元日本航空・国際線客室乗務員であり、現在では英語マナー講師や専門学校の英語講師としてご活躍されている、横手 尚子さんにインタビューしました。前半となる本記事では、英語力が伸びる環境の作り方、社会において英語が使えることのメリット、そして横手さんが教育者として大事にされていることをお聞きしました。

横手尚子さんプロフィール

元日本航空・JALways国際線客室乗務員、現在は駿台トラベル&ホテル専門学校講師。駿台外語&ビジネス専門学校講師、大手オンライン予備校「学びエイド」の英語鉄人講師、「高校生から学べるおもてなし接客英語講座」、大手オンライン英会話EnglishCentralの英語アドバイザーを務め、独自の接遇哲学と明るい授業スタイルにより、国内外の多数の生徒から熱烈な支持を獲得している。国際英語発音協会発音検定最高ランク。英語発音指導士®。主な著作『世界に通じるマナーとコミュニケーション–つながる心、英語は翼(岩波ジュニア新書)』

英語を使って働こうと思ったきっかけを教えてください。

英語を使って働きたいと思ったのには、5つの理由があると思います。

①英語と英語の音の響きが好きだったこと
②英語のできる先輩や同級生に恵まれたこと
③高校時代の英会話の授業でネイティヴの先生との出会いがあったこと
④大学時代にアルバイトで英会話学校の受付をしたこと
⑤広尾に住む大使・外交官のご家庭のベビーシッターをしたこと

このような経験を通して、外国人と触れ合う楽しさや、学んだ英語が通じる嬉しさを肌で感じられたことは大きなきっかけでした。

私は小さなころから、とにかく好奇心が旺盛だったように思います。
「知りたい知りたい!」がいまだに私の口癖で。小学校の卒業文集にも「世界一周旅行をしたい」と書いたように、子供の頃から外国や異文化に興味があったこと。英語を使って世界中の人々とコミュニケーションをはかることができたらどんなに楽しいだろう、どんなに世界が広がるだろうという憧れをずっと抱き続けてきたのも確かです。

さらに、昔から人が好き、お世話をするのが好きな性格で、特に困っている人を放っておけないタイプで、福祉の道に進むことも一時は考えていたくらいです。これらを全て叶えてくれる職業はCAしかないと思い定めたのが、真剣に進路について考え始めた高校3年生のときでした。

英語を本格的に勉強し始めたのはいつ頃ですか?

横手尚子さん

高校時代に英語が好きになり、将来は英語を使って外国の方とコミュニケーションを取れる仕事につきたいとい、キャビンアテンダント(以下「CA」と表記)を志望し始めたのは、高3の頃からです。当時の同級生のお姉さんがJALのCAでした。彼女から「英語力は今のうちにしっかりつけておくこと」というアドバイスをいただいたことで、私の英語熱はさらに高まりました。「英語を使った仕事をしたい」という漠然とした願望が、「JALのCAになりたい!」という具体的な目標に変わった瞬間から、努力という感覚がなくなって、夢中になって英語に取り組むことができました。

どのように英語を習得されてきましたか?

私が通っている高校は英語教育にとても熱心であったため、学校の同級生や先輩との出会いで芽生えた英語への情熱が、私の独学を支えてくれました。また、今のようにネットやCD、DVDなどのない時代でしたので、アメリカのTVドラマを観たり、NHK TVの英会話講座を観たりして英語学習に励みました。大学時代はアメリカ文学を専攻していました。アメリカの作家などが好きで、なかなか大変でしたけれど有名な作品は原書で読みました。

CA時代は、学生時代にやっていたような日々の英語学習をする機会は少なくなりましが、機内で毎日のように英語を使っていたので、英語力自体は向上していきました。CAを辞めてからは自らが教育者となり、児童英語教育からスタートし、大人への英語マナー研修、学生への英語教育と、これまでに幅広い年代に英語を教えてきました。教育者である以上、私自身も日々英語力に磨きをかけています。

幅広い年代に英語を教えた中で、学習者の英語力を上げる工夫や独自の教育メソッドはありますか?

子どもの英語教育では

子どもたちには、とにかく恥ずかしがらずに大きな声で発音してみようと伝えていました。そして、誰かが発表したらみんなで手を叩いて、“Great!”、“Awesome!”、“Wonderful!”などと褒め合おうと言っていました。子どもは褒められるととても嬉しそうにして、「誰か話して」って言うと、みんなハイハイと手をあげて、“Let me speak!”と話したがります。まずは恥ずかしさを取り払うこと、これを小さいうちからやっておけば、中学生や高校生になっても英語を恥ずかしがらずに話せるようになると思います。

あとは、みんなで声を合わせての音読、英語での劇や歌、踊りもやらせていました。家族の方に劇を観にきてもらうと、子どもたちはみんな張り切って覚えてくるんですよね。歌や踊りをすると、英語特有のリズムを覚えることができて、スピーキングの上達につながります。

子どもの頃から英語に接している子に共通して言えることは、ほとんどの子が「英語好き」になるということです。早いうちから英語は勉強するものではなく、日本語と同じ言語で日常で使える楽しいもの、ということを認識させてあげれば、英語への苦手意識もなくなり、どんどん英語ができるようになっていきます。

学生の英語教育では

現在、私は専門学校で教鞭をとっています。その中で大切にしていることは、英語が苦手でも、やる気のある子にはいい成績をあげるようにしていることです。そうすることで、生徒のモチベーションはグンと上がります。今、担当しているエアラインのクラスでは毎回小テストを実施していますが、100点満点のテストで毎回0点〜10点ぐらいしか取れない学生がいました。私はその子に、なぜ勉強をして欲しいのかを一生懸命伝えました。そうしたら、次のテストで90点取ってくれました。クラスメイトもその子を応援していて、全員で成長していこうと頑張っています。そのような頑張りたいと思える環境を作ることは、教育者にとって大事なことだと思います。

また、音読をするときは、私が生徒の前で1番大きな声を出してやるようにしています。私も生徒の前でよく間違えるので「先生も間違えるのよ」なんて言っています。そうすることで、生徒も間違えていいんだと思い、自信をもって話せるようになります。

大人の英語教育では

20〜70歳のタクシードライバーの方を対象に英語研修をしたことがあります。参加者の多くは、英語が好きではない方でした。私自身、英語を教えることに大変苦労して、泣きながら研修をするほどでしたが、やっていくうちに子どもと同じように大人も褒められると嬉しいということがわかったのです。

参加者の1人に、「英語なんていらない」という考えをお持ちの頑固なおじいちゃんがいらっしゃいました。でも少し発音してもらったら、英語の発音がとてもきれいだったので、そのことをしっかりと褒めて伝えたら自信がついたようで、それから毎回授業に参加してくれるようになりました。研修が終わった後には、鍋パーティーに呼んでくれるくらい距離が縮まりました。

大人も子どもも、教育環境によって英語が好きになるかどうか大きく違ってくるんですよね。特に大人は、英語は勉強するものという先入観があるので、それを変えられたら英語学習への意欲が育まれると思います。

英語を使って働くことのメリットを教えてください。

英語は世界の人たちとコミュニケーションをとることを可能にするツールですし、それによって人生の幅や世界観がとても広がるので、絶対に話せたほうがいいですね。これから訪日外国人の数が増えてくることは目に見えてますし、日本企業での英語の社内公用語化などが進んでおり、日本国内でも英語を使うことが普通になってくると思います。私は英語ができたことで人生が豊かになったと感じますし、幸せになれました。

英語を使って働きたいと考えてる方に向けてメッセージをお願いします。

英語ができれば、世界中の人たちとコミュニケーションをはかることができます。英語は世界を広げてくれます。それだけ人生が豊かになり、幸せの幅が広がります。

さらにいうと、英語だけでなく、その国の文化・風習も合わせて学んでほしいと思います。そして、相手に興味を持ち、相手のことを知ろうとすることや、自分のこと(個性)をわかってもらおうとすることがとても大切です。お互いの文化や個性に興味を持ち、知ろうとする姿勢を忘れないようにしてください。

取材後記

今回の取材を通して、英語学習は「環境」によって英語好きにも嫌いにもなりうるんだと感じました。教育者の方には、まずは生徒が英語を嫌いにならないような環境作りを工夫していただきたいと思います。英語を学ぶメリットも、実体験ゆえに説得力がありますね。英語が使えるということは仕事に役立つだけではなく、自らの世界観を広げ、人生までも幸せにしてくれると感じられるそうです。そんなこと言われたら、英語は学ばざるを得ませんよね!

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