【大学入学共通テストと民間4技能試験の活用】~第1回~ 英語教育4技能化の背景

 

第1回 英語教育4技能化の背景

「ゆとり教育」との決別

2000年代に入り、世界経済のグローバル化が進展する一方で、日本では少子高齢化の進行が決定的となり、将来の日本像をどのように描いたらよいのかが大きな課題となりました。教育は国の将来に大きな影響を及ぼす要因です。当時の学校教育はいわゆる「ゆとり教育」の時期にあたりますが、国際的な学力調査で日本の小・中学生の成績がそれまでの世界トップクラスから順位を大きく落とすというショッキングな出来事もあり、日本の学校教育は再び授業時間を増やす方向に舵を転じました。

少子高齢化は日本の生産力、そして国際競争力を低下させる要因ともなりますので、今後も日本の国際的な立場を維持するためにはこれからの日本を支える若者の教育がことさら重要になります。

学校教育全体の改革が進行中

そのような中、2012年12月に発足した第二次安倍内閣は施政方針として「経済の再生」と「教育の再生」を掲げ、これが後の「アベノミクス」の重要な柱となります。2013年6月に発表された「アベノミクス」においては、日本の経済が成長するための3要件のうち2つまでが教育に関するものです。すなわち、教育水準の維持と人材の多様化が成長に不可欠であるとして、それを実現する教育に大きな役割を期待しています。

それまでに進められてきた学校教育の改革の流れがこの方針により一層加速され、2014年12月の中教審答申「高校教育・大学教育・大学入試の一体的改革」に結実します。この答申では、下からの改革=小・中学校の改革と上からの改革=高等教育の改革を連結するとともに、すべての教育改革を実効性あるものにするためには、大学入試の抜本的な改革を一体的に行うことが重要であると強調しています。この答申の中でも英語教育を取り上げていますが、その内容は文科省に設置された「英語教育の在り方に関する有識者会議」が2014年9月に発表した答申がその骨子となっています。

目標はアジアでトップクラスの英語力

そこでは、国際共通語である英語に関して、日本の学校教育はアジアの中でトップクラスの英語力を獲得することを目指すこと(国別のTOEFLスコアによると、当時の日本人の英語力ランキングはアジア30か国中28位でした)、特にコミュニケーション能力の育成について改善を加速化すること、そのためには英語力の評価及び入学者選抜における英語力の測定について4技能の総合的なコミュニケーション能力が適切に評価されるよう促すこと、などの目標が示されています。またその具体的な方法として、入学者選抜で4技能を測定する資格・検定試験の更なる活用を促進すること、「達成度テスト」(現在は「大学入学共通テスト」という名称になっています)の具体的な検討を行う際には英語の資格・検討試験の活用の在り方も含め検討すること、などの方策が示されています。

このように、英語の4技能重視は日本のすべての学校教育に共通する課題として位置づけられ、その結果として小学校における英語教育(外国語活動)の開始や英語の教科化が実施され、また大学入試においても英語4技能を試すという流れになっているのです。

(本記事は、SAPIX YOZEMI GROUP発行『大学入学共通テストA to Z』掲載の記事を一部加筆・修正したものです。)


第2回:新しい高大接続と英語4技能

この記事を誰かに共有する