AO・推薦入試がなくなる!?2021年度入試を理解する5つのポイント

共通テスト「英語外部試験導入延期」の衝撃はあまりにも大きかった

2019年11月1日、萩生田文部科学大臣が2021年1月実施の大学入学共通テストにおける英語外部試験の導入延期を発表しました。(正確には、共通テストを含めた大学入試全般における英語外部試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の稼働を延期したものです。)

大学入試の英語を4技能化するという大きな改革目標の実現に向けて、50万人もの受験生が見込まれる共通テストで英語4技能試験が導入されるかどうかは大きな意味があります。そのようなわけで、共通テストにおける外部試験の導入は早くから受験生や高校の先生、そして受験生の保護者の大きな関心を集めていました。これだけ注目された外部試験の導入が共通テスト本番のわずか1年ほど前に延期になったのですから、その影響は小さなものではありませんでした。

共通テストの一環として、英検などの外部試験の活用を予定していた大学、とりわけほとんどの大学で予定していた国公立大学をはじめ、活用を予定していた私立大学でも、選抜方法の見直しが必要となりました。

大学入試では選抜方法に大きな変更がある場合は、受験生が充分な準備ができるように変更の2年前までに公表するという「2年前ルール」が暗黙の了解となっています。今回の導入延期とこれにともなう各大学での選抜方法の見直しは「2年前ルール」を完全に覆すものでした。まして、その原因が文部科学省の延期決定にあったわけですから、各界からも厳しい批判が集中することになったのです。

勘違いする受験生が続出しているわけ

今回の導入延期が大きなインパクトをもって受け止められた反動として「なんだ、結局元通りになっただけじゃないか」という受験生も多いようです。確かに共通テストについては、これまでの大学入試センター試験と同様、マーク式の読解(リーディング)試験とICプレイヤーを用いたリスニング試験だけになりました。しかし、大学入試全体を見ると、決して元通りになったわけではありません。延期発表時のインパクトがやや収まった今こそ、2021年度大学入試の本当の姿を確認しておく必要があります。

大学入試改革は共通テストだけではない

新しい試験である大学入学共通テスト(以下、「共通テスト」)が始まる2021年度は「新しい大学入試」が始まる年でもあります。新しい大学入試の制度では、主な変更点だけでも下記の5つをあげることができます。ご覧のように、共通テストはそのひとつに過ぎないです。

共通テスト以上に注意すべき変更点は、大学入試の大きな枠組みである「入試区分」がこれまでとは変わることです。

AO入試、推薦入試がなくなる!?

これまでの「AO入試」や「推薦入試」では、主に私立大学においては学科試験に重きをおかず、その他の評価(高校での成績、志望理由書、面接など)で選考をする大学が多く見られました。しかしそれが入学後、授業についていけない大学生を多数生み出す結果となってしまいました。

そこで新制度の「総合型」や「学校推薦型」では、大学生にふさわしい学力も重視することになっています。またすべての選抜方法において、英語は4技能を重視する方針です(新制度入試のポイント③にも示されています)。

さらに、新制度入試のポイント④にあるように、一般入試を含めて「調査書」(高校での成績や活動の記録)を合否判定に積極的に活用する方針があり、ここには高校時代にどのような資格・検定を取得したのかも記載され、評価の対象となります。

このように、共通テスト以外でも、いずれかの選抜試験で英語4技能が直接必要となる場合、調査書の内容として検定取得が有利になる場合など、英語4技能が大学入試に占める意味は決してなくなったわけではないのです。

共通テスト「外部試験導入延期」で4技能は不要になったのか?

出典元:弊社集計による
※「大学数」での集計では、複数の選抜(推薦と一般など)のうちひとつの選抜方法でも該当すれば1とカウントされます。一方、「選抜区分数」での集計では、のべの総選抜方法数に占める該当する選抜方法数となります。

上の図は、今回共通テストでの導入延期が決定した後でも、2021年度の選抜で外部試験を活用するとした大学数や選抜区分数で集計したものです。グレーの部分が共通テストでの導入延期にともない活用を中止することになった部分を表しています。共通テストを採用する選抜方法ではかなり減少していますが、それ以外の選抜方法に関しては、国立・公立・私立の各大学とも多くの大学で外部試験が活用されますし、この数は今後徐々に増加していくと考えられます。

高校の成績も4技能評価に

2022年度からは高校も学年進行の形で新しい学習指導要領にもとづく教育に変わり、今まで以上に英語の4技能が重視されます。そうすると、大学入試だけではなく、日頃の英語の授業でも4技能が評価の対象になるのです。

今回、共通テストにおける英語外部試験の導入が延期されたことで、受験生や保護者の皆さんは何となく安心されているかもしれませんが、英語4技能化への歩みに変化はなく、その対応の必要性は着実に高まっていることを忘れずに、今後も英語4技能学習に力を入れたいですね。

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