日本人の英語力は2011年以降下降し続けている!その原因とは?

世界各国の英語力を比較することができる、興味深いデータが発表されました。それは2021年版「EF英語能力指数」(EF EPI:English Proficiency Index)です。

この指数は、イー エフ エデュケーション ファースト(EF) が毎年、同社のEF英語標準テスト(EFSET:オンラインで受けられる読解力とリスニング力を測る適応型英語テスト)または英語実力テストを受けた受験者のテストデータを基に算出し、発表しているものです。

本記事では2021年版「EF英語能力指数」から見えてきた日本人の英語力について考察します。

出典元:EF EPI

国際的な英語力調査で見た日本人の英語力とその背景

2021年版「EF英語能力指数」は、2020年に英語テストを受験した世界112ヵ国、220万人のデータから算出されています。(英語を母国語としない国と地域のみを調査の対象としています。また、受験者が一定数に満たない場合は集計から除外しています。)

日本人の英語力が低下している

この調査によると、日本人の英語力は下図のとおりです。

「2021 EF EPI」をもとに作成。各年度の下の( )は、日本の順位/対象国数。
スコアの集計方法が2020年以降変更となっているため、2020年以前のスコアは左側の軸、以降は右側の軸。

青い線:日本人受験者のスコア
オレンジの線:国別最高スコア
緑の線:国別最低スコア
赤い点線:日本の順位が対象の国の中で相対的にどのような順位に相当するか。図の上端が最高位、下端が最下位を表します。

この調査が始まった2011年以降、日本人受験者のスコアは緩やかに下降しているのがわかります。また、昨年から今年にかけてスコアが比較的大きく下降しています。

また相対順位を見ると、日本人の英語力が世界の中では明らかに低い方であり、さらに徐々に低下していることがわかります。

日本の2021年のスコアは468(前年比 -19)で、毎年、国別スコアの幅の中間からやや下の位置にいることがわかります。468というスコアは「非常に高い」から「非常に低い」までの5段階評価のうち、下から2番目の「低い」に分類されます。

スコア468の英語力はCEFRのB1レベルに相当し、「観光客として英語を話す国を旅することができる、同僚とちょっとした会話ができる、同僚からの簡単なメールを理解することができる」程度となっています。

スコアが500を超えるとCEFRのB2レベルとなり、「専門分野における会議に参加している、歌の歌詞を理解することができる、熟知した内容についてプロフェッショナルなメールを書くことができる」といった実用的なレベルとなります。

同調査では、この国別スコアにもとづくランキングも発表しています。今回、日本の順位は78位(前年比 -23)でした。ただし、年により集計対象となっている国の数が違いますので、単純に過去の順位と比較しても正確ではありません。

英語力調査から見えてきたこと

このデータの元となった前記の英語テストはあくまで任意受験のテストですので、それぞれの国全体の状況を表したものでないことは当然です。

同調査のレポートにも、「回答者が言語学習の意欲がある人、および若年成人に偏る傾向」があり、「全回答者の83%が35歳未満」「成人受験者の年齢の中央値は26歳」であることが記載されています。つまり、それぞれの国の主に20~30歳代で英語学習に意欲的な人たちの状況であるということです。

しかし、この事情は各国にとって同じであり、20~30歳代で学びに意欲的な人たちとは、それぞれの国のこれからの方向を左右する人たちに他なりません。したがって、このデータは現状を示すとともに、近い将来の国のあり様を暗示するデータとも言えるはずです。

他の「非英語圏の国」の英語力

この調査のレポートには「エグゼクティブ・サマリー」として、各国の英語力の動向が簡潔に記載されています。その中から、気になる記述を取り上げてみたいと思います。

(引用1)ヨーロッパの英語能力は他の地域と比べて最も高く、2011年以降大幅に向上しました。一方、ヨーロッパの経済大国であるフランス、スペイン、イタリアにおける平均レベルとEU諸国の平均は依然として差が目立っています。

(引用2)最も明らかな進歩を見せたのが中央アジアで、2018年に英語能力指標に加わってから年間に平均8ポイントを伸ばしています。

引用1と2の背景には同じ要因=経済があるように思われます。経済的な地位が相対的に高い国の一部(フランス、スペイン、イタリアなど)では、同じEU内でも独自の文化(母国語を含め)を維持しようとする傾向があるのではないでしょうか。

EU内の主な国の結果(スコア, 順位)
オランダ(663, 1位)
オーストリア(641, 2位)
ドイツ(616, 11位)
フランス(551, 31位)
スペイン(540, 33位)
イタリア(535, 35位)

一方、中国の「一帯一路」戦略で脚光を浴びている中央アジアについては、国際共通語=英語をツールに経済圏の拡大に努めている結果とも考えられます。

(引用3)東アジアでは、日本の英語能力の着実な低下にもかかわらず、長期にわたって少しずつ伸びが見られます。

引用3は、日本を含めた東アジアに言及しています。日本以外の東アジアの主要国である中国と韓国の今回のスコアと順位は以下のとおりです。

中国:513(-7)49位(-11)
韓国:529(-16)37位(-5)
※カッコ内は前年比

両国ともスコア・順位が低下していますが、日本に比べればかなり高い英語力であると言えます。「日本の英語能力の着実な低下」という個所を、どう受け止めればいいのでしょうか。

(引用4)世界にオープンな社会であること、平等性と自由、英語能力には明確な関係性が見られます。これを示す最も単純な例が、国外へと目が向けられた国と英語の相関性です。これは好循環を生み出すサイクルであり、世界と深く関わる地域は英語を必要とし、英語が優先項目となります。

引用4は、英語力と国としてのオープンさとの関係を指摘している点に注目されます。日本も「自由」や「平等」には敏感な国だと思いますが、それが世界を視野に入れた「オープンな」価値観になっているかと言えば、やはり疑問が残ります。

「難民認定」や「外国人労働者の受け入れ」に対して日本は極端にハードルが高いことが世界的な人権団体などから指摘されていますが、日本は「内(一次的な関係にとどまる来日外国人を含む)」には寛容でも、「外」に対しては強い警戒感を示すことが少なくありません。その心性が、国内を日本人にとって居心地のよい環境のまま保つ上で有効にはたらくとともに、一方で海外に活動の場を求めようとする動きにブレーキをかける結果となっているのかもしれません。

(引用5)英語と公平性の関係はさらに複雑ではあるものの、英語とジェンダーの平等、社会的流動性、自由との間には一貫して強い相関関係があります。反対に不平等な社会は英語能力を低下させる傾向があり、人口の一部に英語学習の機会が行き渡っていないことが原因と見られます。

引用5は、日本社会の問題点にさらに鋭く切り込んできます。日本におけるジェンダーや社会的格差に対するスタンスの問題は、先進国の中でも群を抜いて遅れが目立つ面です。

形式的な平等は尊重されているものの、実質的な平等を実現する社会的公正への動きは極めて鈍いのが特徴です。これは本質的に現状を良しとする考え方に立脚していて、それゆえに社会の流動化を無意識のうちに忌避しているのかもしれません。

日本人の英語力が伸びない本当の原因

日本人の英語力が伸びないという指摘は随分以前からあり、その改善に向けた英語教育の改革が何度も図られてきました。しかし今回のデータに表れているように、これまでの改革の効果は今のところ全く見られないというのが現実です。だからこそ、現在小学校から大学までを貫いた英語教育の大改革が進められているのです。

しかし上記の分析から示唆されるのは、日本人の英語力が伸びない最大の原因は「英語教育」にあるのではなく、英語力を高めるためにはまずもって日本の社会や文化を世界的視野から見直す、より広い「教育改革」あるいは「社会改革」こそが急務だということではないでしょうか。

現在の英語教育改革で学んだ子どもたちがこの調査の対象年齢になる10数年後に、日本人の英語力ランキングがどうなっているのか注目されます。

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