全4回でお届けする「大学入試『英語4技能試験』のゆくえは?」第3回となる今回は、今後の大学入試の英語に関して想定される方向性を整理しました。
その結果は、当面は現在の大学入試の形と大きな違いはないというものです。とは言え、英語4技能試験の活用自体はこれまで以上に広がる可能性があります。今後の動きを探っていきましょう。
※本記事は、今まで検討会で出た意見などから今後を予測した内容となっております。文部科学省から発表された正式な確定事項ではありませんことを予めご了承ください。
共通テストにおける英語4技能試験はどうなるのか?
まずは、共通テストの枠組みで英語4技能試験が導入されるのかどうかについて、考えてみましょう。
検討会では論点がしばしば原点に回帰しがちな上、外部の団体や有識者・関係者からのヒアリングに加えて、一般からの意見公募も行われることになったため、今後も論点はさらに広がる可能性があります。一連のヒアリングが終了した後に意見が整理され、委員の議論を通じて論点が集約されることになると思われます。
ただし、検討会に与えられた課題については、今回の入試改革を方向づけた2014年の「高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革」についての中教審答申(※)とそれに続く数多くの検討会議を経て、5年以上の時間を費やして議論されてきた内容です。
※文部科学省の中央教育審議会がまとめた意見
それにもかかわらず、ここに来てそれらを前提から見直す議論を行うことは1年と限られた時間的制約から見ても不可能ではないでしょうか。では、この検討会の結論としてどのような方向性が示される可能性があるのでしょう。
実現可能な方向性の予測
実現可能な方向性を検討する上での条件を4つに整理しました。
方向性を検討する上での条件
①英語4技能重視の方向性は維持する
英語4技能重視は現在の小学校から大学までを貫く英語教育の絶対的方針ですので、譲ることはできないでしょう。
②公平性を担保しつつ、共通テストの枠内で4技能を試すのであれば、大学入試センターが作成・運営するか、どれかひとつの英語民間4技能試験を採用する
大学入試センターによる実施は現状では実現の可能性は低いですし、活用する英語民間4技能試験を唯一に限定することは公的立場としては困難でしょう。
③4技能試験は共通テストの枠内で活用するのではなく、各大学の個別試験において活用する
大学の入学者選抜は各大学が定める「アドミッションポリシー」にもとづいて行われるべきことは、他ならぬ文科省が推進していることです。また、すべての大学、すべての選抜方法に4技能試験を強制することはその理念上不可能です。
④英語民間4技能試験の活用を促すため、すべての大学が利用できる成績提供システムを運用する
特に私立大学での活用を促すためには、成績処理を容易にするシステムの存在が重要になります。
想定される方向性
上記の4つの条件を考慮し現実的な面から考えてみると、以下の形に決着する可能性が高いと考えられます。
●共通テストの枠組みにおいて英語4技能試験を全員に課すことは当面見送る。
●英語4技能試験は、各大学が実施する個別試験において実施する。
●個別試験における英語4技能試験は各大学が作成・実施する、または外部試験を活用する。(外部試験の活用が主となるでしょう)
●外部試験の活用による英語4技能評価を促進するため、成績処理の負担を軽減する成績提供システムを設ける。
●共通テストの「英語」試験は存続する。(当初は2023年度までの暫定的実施の予定でしたが、私立大の活用を考えると廃止は難しいでしょう。ただし、現在実施されている「リスニング」試験は廃止され、「リーディング」試験のみになる可能性もあります)
これは、基本的にこれまでの大学入試と変わらない形です。しかし英語教育の改革を前提に各大学が大学入試における英語4技能評価を進めるならば、英語4技能試験の活用は、大学入試全体で見ればこれまで以上に広がる可能性があります。
まとめ
結局、大学入試は現状に近いものに戻るということで安心してよいものなのか。もしくは英語民間4技能試験の対策もしなければいけないのか。本記事でまとめた予測だけでは、大学入試を控えた中高生の皆さんの不安は払拭しきれないかと思います。
そこで最終回となる次回では、今後の大学入試における英語4技能力の位置づけと、これからの時代に英語4技能試験を受ける意義について語りたいと思います。現時点で具体的な方向性が決まっていない今、このコラムが皆さんが英語を勉強する上でのヒントやモチベーションになれば幸いです。
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