【高校の英語が変わる】第1回〜大きな改革のうねり〜

これまでの流れ

現在小学校で行われている「外国語活動」の学習学年が早まり、さらに正式な教科として「外国語」(英語)が導入されることについては、以前別のコラム『どう変わる英語教育』で詳しくご説明しました。しかし英語教育の変化は小学校だけでは終わりません。

小学校での変化は当然、それに続く中学校の英語教育の内容に影響を与えますし、さらにそれは高校へも波及していきます。そしてそれら一連の変化は、高校の先に控えている大学入試の英語にも関係してきます。

上記のコラムでは英語教育の「スタート」にあたる小学校についてお話しましたので、今度は「ゴール」に位置する高校の英語教育の変化について見ていきたいと思います。

大きな改革のうねり

先のコラム「どう変わる英語教育」で日本の英語教育が大きく変わろうとしていることを指摘しましたが、それを具体的に方向づけているのが「学習指導要領」の改訂です。

「学習指導要領」とは、学校教育法に基づいて,幼稚園から高校までの教育課程(カリキュラム)の基準を定めているもので、教科別に教育内容と指導方法の要点を示しています。また授業で使う教科書もこの学習指導要領に準拠して編集されます。「何をどこまでどのように学ぶのか」を定めている、最も基本的なルールです。

学習指導要領は、社会のニーズや将来展望の変化に応じて、ほぼ10年ごとに改訂されますが、これまでがどちらかと言えば内容の一部変更や科目の改編程度の改訂だったのに対して、今回予定されている改訂は内容・方法の全般にわたる大幅な変更であるため、さまざまな意見や議論を呼び起こしています。

新学習指導要領

今回の学習指導要領(新しくなるという意味で「新学習指導要領」や「新課程」とも呼ばれます)にはいくつかの特徴がありますが、特に注目されるのは次の点です。

① 教育の目標として、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「学びに向かう力・人間性・主体的に学習に取り組む態度」という学力に関する3つの観点を示している。

② 学習の成果の評価も、上記の3つの観点から行われる。

③ 教育の最終的な目標である「学びに向かう力・人間性」を育成するためには、「主体的に学習に取り組む態度」を促す必要があり、そのためには「主体的・対話的で深い学び」(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)を繰り返すことが重要である。(「習得・活用・探究」と表現されることもあります)

「新学習指導要領」はこれらの観点からまとめられていて、教科ごとに「どのような知識・技能を習得するのか」、「どのような思考力・判断力・表現力が求められるのか」、「どのような学びを求める子どもに育てるのか」について細かく記述しているほか、それぞれの力の育成に効果的と考えられる学習法(指導法)についても、これまでになく詳しく言及している点が大きな変化です。

学習指導要領と評価の変遷

学習の評価の仕方や観点はこれまでも少しずつ変わってきました。これは、ほぼ10年ごとに改訂される学習指導要領がその時代の社会の要請を受けて、どのような力を重視するかによって基本的な考え方に変化が生じているためです。最近の学習指導要領の改訂と、評価方法・評価観点をまとめた下図にもあるように、現在の学習指導要領では「関心・意欲・態度、思考・判断・表現、技能、知識・理解」の4つの観点から評価することになっています

学習指導要領の評価観点の変化をまとめたものが以下になります。

「新しい大学入試」とも関係

「新学習指導要領」は、小学校が2020年度から、中学校が2021年度から全学年で一斉に実施され、高校については2022年度の入学生から学年進行で順次移行することになっています。この移行タイミングとは別に、大学入試については2020年実施分(2021年度入学生)から新しいシステムに変わります。

現在の一般入試・推薦入試・AO入試という区分が、一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜という区分に変わり(選抜期間や選抜方法も変化)、「知識・技能」中心となっている現在の大学入試センター試験に代わって、「思考力・判断力・表現力」も問う大学入学共通テスト(一部「記述式」を含む)が導入されるなど、こちらも大きな変化が予定されています。

一見すると別々に進められているように思われる学習指導要領と大学入試の変更ですが、実はひとつの改革の2つの面です。ひとつの改革とは、「大学教育、高校教育、大学入試の一体的改革」のことです。戦後、教育や入試に関する様々な改革が試みられましたが、成果は思ったほど上がりませんでした。その原因は、それぞれの改革が個々の学校段階の範囲にとどまりがちで、学校教育として連続した効果が表れてこなかった点にあります。また、教育改革と入試改革(特に、大学入試改革)が別々の理念で行われたため、最終的な目標になりやすい大学入試の現実に、学校教育が合わせざるをえなかった点に問題がありました。

今回の改革では、その反省に立って、学校教育全体の方向性に大きな影響を及ぼす大学と高校の教育、そして両者をつなぐ大学入試を一体的に改革することで、改革の実効性を高めようとしています。

今回のまとめ

今回は、これから始まろうとしている教育改革が従来とはかなり異なった性格の改革であることをご説明しました。次回は、このような性格の改革によって英語教育がどう変化するのかを見ていきます。

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