センター後継テスト、英語民間試験導入はどうなるか。アンケート結果を発表します!

全面実施 or 段階的実施?センター後継テスト、英語民間試験導入はどうなるかという記事に関して実施した、読者アンケートの集計結果をお知らせ致します!多くのご意見をいただき、誠にありがとうございました。多様なご意見が考えられるトピックです。これらのご意見を参考に、引き続き議論を深めていきたいと思います。

Q.(英語民間試験導入の)全面実施 or 段階的実施? あなたはどちらが良いと思いますか?

アンケートの結果、全面実施案を支持する人が全体の約2/3となりました。では、読者の方々がどのような考えでこのような意見に至ったのかを見ていきましょう。

全面実施案を支持する意見

どのみち全面実施するのであれば、始めからそうしたらいいと思います。ただ、どの外部試験を使用するか、それらで果たして同じ評価ができるのか、そのあたりをしっかり検討する必要があると思います。

元々センター試験廃止には大反対なのですが、廃止すると決めたなら中途半端なことはせず、一気にやったほうがいいと思います。そうしなければ、良問として信用のあるセンター試験を作成している方々が浮かばれません。それよりも、いっそのこと全員が受けるものをなくして、各大学の個別試験だけにしてしまえば一番いいと思います。いわゆる共通一次以前に戻すということです。

大きな変化を嫌うのは、日本人の文化的特徴です。その心情を緩和する方法として取られる常套手段が「段階的に」「徐々に」ですね。今回の改革案でも、高校や大学関係者が示した不安を当面和らげるために2案を示し、「段階的ならいいか」という雰囲気を作ったという感じもありますね。

段階的実施案を支持する意見

 民間の試験は公平性に関して問題があると思います。民間の試験間で統計データを集めるまで全面実施は避けた方がいいと思います。

第一に、cefrの基準で大学側に民間の試験結果を提出するということですが、民間の試験によっては英語力が同じでもランクが同じになるかどうか検証が必要です。運営団体がそれぞれスコアや級がどのCEFRでどのランクになるか主張していますが、他の試験を受けても必ず同じランクになるか統計データを集めるべきだと思います。「ある試験を受けて簡単にB1がとれるのに他の試験では何度受けてもA2にしかならない」ということはあってはならないと思います。

第二に、高校生のおそらく99%以上はB1以下のはずです。B2以上は、英語教師が到達すべきレベルとして文科省が推奨しているレベルです。平成27年度の調査ではB1レベルに到達している高校生は約2%です。つまり、民間の試験を利用してCEFRの基準に照らし合わせると事実上3段階評価になります。これでは大学入試の選抜試験という性質上、無意味です。「ある大学の受験者が全員同じレベルだった」ということがあり得ます。

2番目の問題を解決するためにはCEFRの基準ではなく、スコアを基準にする必要があります。民間の試験を一つに絞るか、統計データを集めて異なる試験間でスコアの整合性を検証する必要があるでしょう。「民間の試験を一つに絞る」案は、特にスピーキング試験の実施可能性について問題があるでしょう。センター試験受験者はおよそ50万人で、彼らが全員同じ試験を年2回受けたとすると年間100万人です。これに対し、例えばTOEICのspeaking testの受験者は年間およそ3万人程度です。  以上から統計データを集めてスコアの有効性を検証するまで全面実施は避けた方がよいでしょう。

今回の改革案に対しては先述のような「大きな変化に対する漠然とした不安」以外にも、ここにご紹介したような、実証的な面での課題を理由に反対や見直しを求める意見も多いようです。

上の意見では、民間試験の導入に当たって2つの問題があると指摘しています。

①試験ごとに難易度が違う可能性がある

各4技能試験とCEFRのランクがきちんと対応しているかをチェックしなくてはなりませんが、試験によって歴史や受験者数などに大きな差があり、現在はそのために必要なデータがまだ十分に集まっていない段階です。

こういったデメリットから、十分なデータを集計し、各試験を公平に扱うことができると保証されるまでは、4技能試験の実施はすべきではないという意見は説得力がありますね。

②CEFRでは生徒の英語力を正確に測れない

日本の高校生のレベルが、CEFRで測定するレベルの英語力に達していないのではと指摘しています。

上の図を見ると、高校3年生の英語力はA1とA2に大きく偏っていることがわかります。特にスピーキングとライティングの分野では、なおさらそれが顕著ですね。高校生の全てが大学受験生ではないにしろ、これでは超少数であるB2レベル以上を除き、大学側はB1、A2、A1の3段階のみを想定した選抜基準を設けるしかありません。こうした現状が背景にあり、CEFR基準では受験者の英語力の違いを正確に判断できず、英語が試験科目として機能しない恐れも考えられます。よって、評価の幅が細かいスコア素点による判定の方が有用という意見も一理ありますね。

実は、今回の入試改革にはいくつかの改善ポイントがあります。例えば、「思考力・判断力・表現力の評価の重視」というポイントから「記述式問題の出題」が、「1回限りの選抜の改善」というポイントから「複数回受験制」が、そして「1点刻みの入試の改善」から「段階的評価」が、それぞれ目指されたという経緯があります。英語の段階的評価もこの方向性に沿ったものですが、記述式の導入が検討されている国語や数学でも、採点の公平性を担保するためには1点刻みではなく段階的評価とせざるをえないという事情があり、ともに評価能力に大きな問題があることはテスト学の専門家も指摘しています。

一方で、民間試験の導入によって高校での教育が変化し、その結果上の図の英語力分布が大きく変動するのでは、という期待もあります。高校生全体の英語力が底上げされ、A1レベルの高校生が相対的に減り、A2レベルはもちろん、B1やB2レベルの学生の割合が増えることが理想です。それによって、CEFR基準による英語試験もより有効性を増していくという好循環になるといいですね。

紙幅の関係で、今回はお寄せいただいたご意見の一部のみをご紹介させていただきました。これ以外にも、様々なご意見を頂戴しています。今回の入試改革は高校教育の改革にも通じるものですから、すべての子どもに関わる問題です。6月には正式にどちらの案が採用されるか決定されるようですが、大きく変わろうとしている日本の入試・教育に今後も注目しながら、皆さんと一緒に議論を続けていきたいと思います。

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