高大接続センター尾木様が語る、グローバル化の時代の中で社会を変革する人を育てる関西学院大学とは。

2014年には、全国から申請のあった大学104校中37校(内、私立校大14校)のみが認定された「スーパーグローバル大学創成支援(タイプB)」として採択。また、2016年度文部科学省「大学入学者選抜改革推進委託事業」にも選定され、その代表校を務める関西学院大学。そんな教育改革の先頭を歩む関西学院大学では、英語外部試験を活用した入試が行われています。(詳細はこちら) 

今回は、関西学院大学高大接続センター次長の尾木義久氏に、英語4技能試験を入試に活用した背景や高大接続改革に向けての取り組みについてお話を伺いました。 

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− グローバル化対応に熱心な関西学院大学では、どのような英語教育が行われていますか?  

関西学院大学は1889年にアメリカ人宣教師W.R.ランバスによって神戸に設立され、以来キリスト教主義教育に基づく全人教育を行ってきました。そのような歴史を持つ関西学院大学では、「世界市民の育成」を大学のミッションに掲げています。世界を視野におさめ、他者(ひと)への思いやりと社会変革への気概を持ち、高い識見と 倫理観を備えて自己を確立し、自らの大きな志を持って行動力を発揮する“Mastery for Service”を体現する世界市民を育成することが関西学院のミッションです。建学以来、英語教育を非常に重要視しており、時代のニーズに合わせてプログラムを深化させてきました。グローバル化した社会にあって、英語4技能は非常に大切であると考え、英語教育プログラムを充実させています。例えば、ネイティヴスピーカーによる少人数授業の「英語インテンシブ・プログラム」や、学生のレベルに応じた段階別授業を実施するとともに、理系学部においても英語の運用能力を高めるため理系のためにデザインされた英語教育プログラムを実施しています。

英語インテンシブ・プログラムについては、オールイングリッシュの少人数授業、レベル別の集中授業、目的別の英語スキルアップとコンテンツラーニングがポイントであり、1年生の春学期または秋学期より、集中的な英語の授業を履修するコース「インテンシブ・イングリッシュ・コース」や、学習目的別・レベル別クラスで英語4技能検定に対応した「スキルアップ・コース」、さまざまなテーマを英語で学び実践力を高める「コンテンツ・コース」で構成されています。入学前に受講することができる新入生向けの「ウェルカム・インテンシブ・イングリッシュ」というプログラムも設けています。 

こうした多様なプログラムを実施してきた結果、多くの学生の英語力向上に繋がっています。 

− 英語4技能試験を入試に導入した経緯を教えてください。 

従前よりAO入学試験で英語4技能試験を活用していましたが、文部科学省グローバル人材育成推進事業の採択にあたり、英語4技能試験のスコアを評価するグローバル入学試験を導入しました。さらに、スーパーグローバル大学創成支援事業にエントリーを行う段階において、英語4技能試験を入試に活用することが義務付けられています。そのような経緯もあり、2016年度入試より大学入試センター試験を利用する入学試験に、英語4技能試験を活用した入学試験を実施しています。今後、英語4技能試験の普及にしたがって、英語4技能試験のスコアを有する生徒の入学比率を高めようと考えています。

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− スーパーグローバル大学に選定された理由となった、「グローバル・アカデミック・ポート構想」について教えてください。 

 グローバルアカデミックポート構想とは、関西学院という学びの場を人やモノ、情報が行きかう「港」ととらえ、異なる国・地域・立場・専門分野を研究する人たちとの交流を図る中で、「世界市民」として求められる知識やスキル、素養をみがくことを目的にしたものです。プログラムの中でも、特に核となるのが「ダブルチャレンジ制度」です。 「ダブルチャレンジ制度」は、全学生が自身の所属学部や主専攻の学び(ホームチャレンジ)に加えて、異なるものとの出会いの場(アウェイチャレンジ)に挑戦するという独自の教育OS(Operating System)です。アウェイチャレンジには、「インターナショナル」(留学等の国際交流)、「副専攻」(他学部での体系的な学び)「ハンズオン・ラーニング」(社会での実践型学習)、の3プログラムがあります。 異なるものとの出会いの場「アウェイチャレンジ」を通じて、全学生が、将来グローバルに活躍するために不可欠な資質、すなわち「国際性」「主体性・タフネス」「多様性への理解」等を身に付けることがその狙いです。 

 その他にも、2017年からは、国連をはじめとする国際機関、国際NGO職員や外交官を育成するプログラムを体系的に整備し、「世界の公共分野で活躍するグローバルリーダー」の育成を図るため「国連・外交コース」と学部生向けの「国連・外交プログラム」を開設します。また、この2つのプログラムに先駆けて、2016年には「関西学院世界市民明石塾」という、将来国連職員や外交官等、国際公共分野で活躍できるグローバルリーダーをめざす高校生を対象に、国際的視野と主体的な課題解決力の涵養を目的としたキャンプを実施しました。このキャンプにはCEFR B2レベル程度の英語4技能試験スコアを有する高校生が参加し、非常に濃密なセッションが行われました。 

− 英語4技能試験導入以外に、高大接続改革に向けて貴学ではどのような取り組みが行われていますか。 

 日本ではいま、高大接続改革が進行中ですが、その改革の実施に向けた研究・開発を行う、「平成28年度文部科学省大学入学者選抜推進委託事業」というものがあります。この事業は、文部科学省が大学入学者選抜に関する専門的・実証的な研究能力を有する機関に委託して、各大学における大学入学者選抜改革を進める上での具体的な課題や問題点を整理するとともに、特に「思考力・判断力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に関する多面的・総合的な評価を行うための実践的で具体的な評価手法を構築し、その成果を全国の大学に普及することにより、各大学の入学者選抜改革を推進しようとするものです。 

関西学院大学は、その平成28年度の委託事業に主体性等分野で選定されました。関西学院大学を代表大学として、大阪大学、神戸大学、同志社大学、立命館大学、早稲田大学、大阪教育大学、関西大学の7大学と連携して行う事業ですが、具体的には、学力三要素の一つである「主体性等」の評価手法の開発、評価の基準や尺度の変更についてです。また、ICTを活用した評価手法を開発することにも取り組んでいます。まさに日本の高大接続改革を先導する調査・研究がこの委託事業で行われることとなります。 

− これに先立って高大接続センターが2015年に設立されましたが、どのような役割を担っていますか。 

センターでは高等学校へのワンストップサービスを実現する部局として誕生しました。高校と大学の連携や接続というものを意識した教育事業支援を行っており、大学教員による授業の実施などのほか、国連ユースボランティア等に参加した学生と高校生のワークショップ、全国のスーパーグローバルハイスクールを対象とした課題研究発表会(「SGH甲子園」)や本学の特色でもある国際機関職員育成に関するフォーラムなど、様々な高大連携企画を提供しています。 

− 2020年の教育改革・入試改革に向けて、貴学の目標を教えてください。 

 委託事業においては学力三要素の一つである「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」をいかに評価するかが課題となっています。高等学校における主体性等を育む学びを入学試験において評価することが、高等学校教育の改革につながるわけですから、責任は重大です。「主体性等」の力は、非常に評価が難しいものですが、子供達がこれからのグローバル化の時代を生きるために必要な力であることは間違いないことでもあります。「主体性等」を評価できる入試制度を提案し、日本の教育改革に貢献できるよう取り組みます。

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− 最後に、生徒に向けてメッセージをお願いいたします。  

私達が生きる社会は、ますますグローバル化していきます。そのグローバル化した社会において、私達が様々な課題に直面することは間違いありません。そんな時代にあって、関西学院大学で学んだ皆さんが、それぞれの目の前にある課題を解決して社会を変革する力を身につけることができるようになることが関西学院の目指すところです。単にグローバル化というと、英語や留学というイメージがありますが、グローバル化とは、それだけではありません。関西学院大学の11学部の学びそのものが、社会をよりよく変革する力を身に付けるための学びであり、それこそが関西学院大学の伝統です。ぜひ、社会変革の志のある生徒に関西学院大学に来て学んでいただきたいと思います。 

− 編集後記 

ダブルチャレンジ制度による国際交流・英語教育の充実はもちろん、副専攻プログラムやハンズオン・ラーニング・プログラムといった実践的な学習も非常に充実していると感じました。昨今英語をただ話せる人材ではなく、グローバルの問題を解決できる人材が世の中に求められています。日本国内に限らず、世界を股にかけて活躍したい、そんな考えを持つ生徒の皆様に是非目指していただきたいと思います。 

 

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