明治大学で経営学部だけがなぜ英語4技能試験を活用?山下佳江教授に聞く

明治大学経営学部は、2017年度入学試験(2017年4月入学)より一般選抜入試の一部において英語資格・検定試験を活用する「英語4技能試験活用方式」の試験を実施することを発表しました。

※「英語4技能試験活用方式」は経営学部でのみ導入されており、今回のインタビューも、明治大学経営学部における英語教育への考えをお伺いしています。

明大経営学部

グローバル、英語4技能、高大連携、入試改革……様々な主張が飛び交い、まさに変革の時代にある英語教育の現場ですが、今回のインタビューでは、いち早く英語4技能試験を一般入試へ取り入れた、明治大学経営学部の山下教授へ、その真意をお伺いしてきました! 英語教育関係者の方、並びに受験生の方、必見のインタビューです。

明治大学経営学部 山下佳江教授 インタビュー概要

  • 実践「英語」こそ、経営学部が必要とする力
  • TOEIC導入から始まった、「グローバル経営人材育成」遍歴
  • 求めるのは、「使える英語」に価値を見出す学生!

目次

「経営学部」と「英語」、一見直接的な結び付きの無い組み合わせに思えますが、明治大学経営学部では、英語教育についてどのような考えをお持ちなのでしょうか?

明治大学経営学部では「グローバルレベルでビジネスを創造・推進する経営人材」を輩出することを教育方針として掲げています。グローバルビジネスの複雑な環境を読み解き、グローバルビジネスリーダーとなる人材、つまり、「グローバル経営人材」を育てたい。そこで必要になってくるのが、「英語」、なかでも「実践英語」だと考えています。

英語と一口に言っても色々ありますが、私たちが目指しているのは、英語で電話応対ができたり、Eメールが書けたり、ビジネス目的の交渉ができたり、実際のビジネスの場面で英語を使ってコミュニケーションがとれる英語力です。高度に専門的で複雑な内容を適切な表現で国際社会のマナーに従ってタイミングよく伝え合える能力です。こういった人材を輩出するため、実践的で包括的な英語教育が必要だと考えています。

2017年度一般選抜入試では、英語4技能試験導入は経営学部のみとなっていますが、今回の導入は、明治大学の方針として、ビジネスの実践の場を意識した英語教育に力を入れてきた経営学部からまず導入してみる、といった位置づけなのでしょうか?

明治大学には多くの学部がありますので、一学部だけの取り組みということでそのような印象を与えるのかもしれませんが、そのようなものではありません。今回の導入はあくまで、明治大学経営学部が長年にわたって積み重ねてきた学部教育の取り組みをもとに、学部の中で多くの議論を重ね、学部独自の考えに基づき実施に至ったものです。

なるほど、今回経営学部独自の考えで「英語4技能試験活用方式」の導入を行ったわけですね。では、今回の導入に至るまでどういった経緯や取り組みがあったのでしょうか?

経営学部では、グローバルということばが日常的に使われ始めるずっと以前から、実践英語を意識した教育を行ってきました。以前の大きな取り組みとして、2002年度にTOEICを利用した習熟度別クラス編成を導入したことが挙げられます。外部英語テスト利用は現在では珍しくありませんが、大学の英語といえば大教室で英文講読の授業が大半だった当時、ビジネスの場で広く活用されていたTOEICを学部の英語教育に体系的に取り入れ、活用するのは画期的でした。

十数年前から実践的な英語教育を意識されていたのですね。

はい。その後も様々な取り組みを行い、実践的な英語を身に着けてもらおうと努力してきました。しかし、ご存じのように、ここ数年のIT技術等の目覚ましい進歩とそれに伴う情報伝達の形態や速度の大きな変化とともに英語学習も一変しました。グローバル社会が求める英語力、それを見据えた学生が求める英語教育と学部で用意したカリキュラムとに、少しずつ齟齬が生じるようになりました。

どういった対応をされたのでしょうか?

こういったグローバル化の時代の流れに適応しながら、経営学部の教育方針を体現するため、昨年度、新たにGREAT(Global Resources English Applied Track)というプログラムを開始しました。

http://www.meiji.ac.jp/keiei/features/great.html

これは、グローバル経営人材育成のための4年間の特別カリキュラムです。将来、海外留学や国際ビジネスの分野での活躍を目指す学生のために作られたもので、特別編成の少人数クラスで実践的な英語スキルを身に着けながら、英語による授業科目で教養や専門知識を学ぶことが出来ます。

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GREATは、どのような学生が履修しているのですか?

GREATは入学時に実施するTOEICのスコア上位者を対象とするプログラムです。開始して2年目ですが、今年度入学のGREAT履修の学生は、大学受験突破を目指して英語を勉強してきた一般的な学生のイメージとは、少し違った印象です。「将来商社で働きたいので英語はぜひマスターしたい」「海外の大学院進学を目指しているのでGREATで頑張りたい」、「英語を身に着けることで多くの素敵な人たちと出会いたい」、といった、「使える英語」に自分なりの価値を見出している学生が多く、ディスカッションやプレゼンにも積極的に取り組んでいて非常にポジティブです。GREAT履修生には、今後、積極的に学部の短期・長期の留学制度などを利用して、世界へ挑戦していってほしいと思います。

明治大学経営学部が、早くから英語の必要性を感じ、一貫して実践的な英語教育に力を入れて来たことがよく分かりました。今回の英語4技能試験を取り入れたのも、教育方針をさらに体現していくことが目的なのでしょうか?

はい。入学者選抜という入口で英語4技能試験を利用することで、私たち経営学部のアドミッションポリシーに合った学生に多く来てもらいたい、という意図があります。

具体的には、どのような学生に来てもらいたいですか?

使える英語を身に着けたい、という意識だったり目標を持っている学生ですね。決して、英語力がすでに抜群に高いレベルに達している学生を求めている訳ではありません。一方で、入学後実践的な英語力をグローバルスタンダードのレベルに向かうための基盤として、入学時に一定の英語4技能は身に着けていてほしいと思います。

特に、学ぶ技能の専門性や多くの練習が必要なライティング技能の習得には時間がかかります。したがって、この入試制度で見極めたいことは、英語4技能について、学部が目指す人材育成にふさわしい十分な素地を持っているか否か、という点です。素地とは、今後の伸びの可能性というポテンシャル、つまり、入学時点での英語についての資質ということですが、それはすなわち、英語4技能をバランスよく身に着けることだったり、英語が実際に使えることが大事だ、という価値観を持って中学あるいは高校の頃から英語の勉強を頑張ってきた学生、ということになるかと思います。

グローバル化の時代では、外国人と接する機会も増え、インターネット等で世界中の情報を得ることが出来ます。そういう環境の中で英語の必要性を感じている人、将来、英語とどのように関わっていくべきか考えている人に、ぜひ来てもらいたいと考えています。特にGREATは、そういう素地や価値観を持った学生の英語力を伸ばせるカリキュラムになっています。

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普段から世界のさまざまな動きに興味や関心のある学生、4技能のバランスのとれた英語総合力、使える英語に価値を見出す学生に来てもらいたいということですね。ちなみに、各試験に設けたれた基準スコアは、どのように決定されたのでしょうか?

スコア基準は、経営学部独自の基準で決定しています。先に述べましたが、4技能試験活用の背景には、英語4技能についての基礎力があり、グローバルスタンダートに照らした実践的な英語力、英語総合力を身に着けたいという考えを持つ人が欲しい、という意図があります。スコアの基準は、こういった趣旨のもと、入学後経営学部で用意する教育プログラムにスムースに移行し、十分な成果を収めることが可能であると思われる英語力のレベルを、文献研究・データの分析と教員の経験値に基づいて設定しています。

英語4技能試験活用方式の導入が、グローバル経営人材育成の一環であり、徹底的に考え抜かれたうえでの施策であることがよく理解できました。最後に、受験生の皆さんに一言お願いいたします。

受験生の皆さんもスマホやタブレットPCの登場により、情報伝達の世界が大きく変わり、世界が一瞬でつながることができるという変革の時代を肌で感じていることと思います。英語は単なる教科ではなくなりました。グローバル社会の中で世界の人々と協働し、力強く活躍するための必須ツールです。

経営学部では、昨年度開始したGREATをはじめ、IBP・ISIBM・学部間協定留学などの学部独自の留学プログラムを用意して入学時からグローバルスタンダードを意識した教育を行います。

受験生の皆さん、英語4技能をバランスよく身に着け、自分の夢に向かっていける英語力をつけていきましょう。明治大学経営学部で皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

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